ヘッドホンを耳に当てながら音楽を聞く、昼休みの楽しいひとときにはもってこいといえる。
蜜柑は名探偵コナンの「Secret of my heart」を聞いている。歴代の主題歌において売上NO.1となった名曲だ。
一番好きなフレーズは最初に出てくる「どんな言葉に変えて 君に伝えられるだろう」の部分。好意を寄せている男性にどうすれば振り向いてもらえるのか、それを考えただけで胸はワクワク感に包まれる。
現時点で好きな男性はいないものの、一年後、二年後にはできているだろう。そのときにどのようにすれば、相手に好意を伝えられるのかを考えるだけで胸は昂ぶる。恋愛は現実よりも想像するほうが楽しい。
自分の未来の恋愛を想像していると、同僚の松脇麻衣子が近づいてきた。彼女は一ヶ月前に彼氏に振られたばかりということもあり、恋愛にブルーになっていると思われる。
蜜柑はヘッドホンを外すと、麻衣子は話をした。
「蜜柑、どんな曲を聞いているの」
「名探偵コナンの『Secret of my heart』だよ」
男女の恋愛として話を持っていくと、空気は冷たくなってしまいかねない。蜜柑は場を乗り切るための方法を考えるも、麻衣子は恋愛について話してしまった。
「新一君と蘭ちゃんみたいに親しくなりたいな。そういう相手を見つけられるように努力しよう」
麻衣子は破局したばかりにもかかわらず、恋愛に積極的だった。物怖じしない性格は羨ましい。
「破局したことはショックを受けてないの」
麻衣子は何事もなかったかのように笑ってみせた。
「相手と別れたからこそ、新しい冒険に出られるじゃない。もっといい男を見つけてやるんだから」
麻衣子は闘志で漲っていた。蜜柑は新しい恋に挑戦しようとしている女性を応援すると同時に、負けたくないとも思った。
「蜜柑、仕事帰りに一緒にカフェに行こうよ」
「うん。癒やしのひとときで心を休めよう」
同僚との会話はなおも続く。職場にいるはずなのに、一時的に仕事から開放されたかのように思えた。
文章:陰と陽