エピソード

バス車内が地獄と化した。

バス車内が地獄と化した。

順を追って話そう。

 

朝通勤のバスに乗り込むと、乗客はまだひとりもいなかった。
この時間のバスは発車時刻よりも大分早めに来ているようだ。
寒い中でもギリギリまで乗客を待たせる便もあるのに比べると、なんだか良心的な感じがした。

ぽつぽつと乗客が乗ってきた。

ラッシュ時ではないからか、ひとが落ち着いている。激怒しているかのように交通系ICカードをひっぱたく人はいなかった。

異変が起きた。
かなり強い香水の匂いがしてきたのだ。
はっきりとはわからないものの、どうも三つ前の座席に座ったご老人のように思われる。

こりゃかなん、と思いながらもじっと耐えた。耐えるほかない。

しかし、である。
こんな時に限って道路が渋滞しているのだ。
バスは遅々として進まない。停車駅はあと三つ。耐えるほかない。

その時であった。
香水の匂いに、アレの匂いが混じり始めたのだ。
最初は、ちょっとした違和感のようなものだった。だが、それは確信に変わった。

俺は考えた。
まるで、あらかじめアレの匂いをカムフラージュするために香水をふりかけていたかのようなのだ。

おじいちゃんがどうせ粗相するから、先に手を打っておいたご家族か介護の方か…

バスを出たら、母親に手を引かれた小児が俺に向かって「くさい!!」と叫んだ。

 

俺じゃないっ!!!

文章:増何臍阿

画像提供元:https://visualhunt.com/f7/photo/8261599200/ec44644823/

関連記事

  1. 何事も経験が大事
  2. 思い返してみたら
  3. 3日前に振袖レンタル予約して成人式行ってきたレポ
  4. 『耳が痛い話』を聞くことの大切さ。
  5. 怖い風が吹く

おすすめ記事

ディストピア『見果てぬ、地平』

首都にやって来て、初めて街の荒廃ぶりを目の当たりにした。噂では聞いていたが、…

白鵬の初日の相撲を見て感じたこと

 白鵬は、初日を白星で飾ったものの、本来の動きではありませんでした。6場所連続休場中…

自分を基準にしたことは人の心に響かない

 人に対して、「よくできる」、「きみはどうしてできないのか」、「若い」、「年を取って…

接客業のマスクについて考える

 接待業でマスクをする人が増えたからか、接客業でマスクをしてもよいのか。そのような話…

中井 久夫『治療文化論: 精神医学的再構築の試み』岩波現代文庫

中井 久夫『治療文化論: 精神医学的再構築の試み』本書は1983年に刊行された『…

新着記事

PAGE TOP