田坂広志『なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか[新版] 人間の出会い』
マネジメントを本業にして生活の糧を得てきた著者の田坂広志氏。
自らの体験を下地にして、独自のマネンジメント理論を確立していった内容が綴られていました。
ところで、著者が考えているところのマネジャーとは、部下や社員の人生を預かる立場で、著者によれば「重荷」を背負う仕事とのことです。
時には、その置かれた立場を誤解して、マネジャーになると「権限」や「権力」を手にすると考えている人も数多く存在すると指摘します。マネジャーの落とし穴とは、こうした「権力志向」や「操作主義」に流されてしまう危険性が伴っていることを、常に自覚しなければならないと述べていました。
「重荷を背負う」ことについて、著者の考えをもう少し紹介すると、「相手の成長に責任を持つ」ことのようです。相手の成長を支える方法には正解がないため、マネンジメントが上手く機能しているか否かの判断は容易ではありません。
マネンジメントが有効に機能するためには、マネジャーの心の姿勢の有り様が問われると述べます。優れたマネジャーになれば、部下を一人の人間として遇する姿勢を持ち合わせており、そうした性分をお持ちの方ほど、マネジャーに適しているとのことでした。
さて、この本はマネンジメントを行う立場にあるところのマネジャーの心得を読者に分かりやすい言葉で指南しています。
一つひとつが短いエッセンスで語られ、さらには難しい言葉で解説を加えるのではなく、平易な言葉を選んで、その言葉の意味を深掘りしていく方法を用いて、読者を導いていくような文章が特徴的だと思いました。
著者が選んだ言葉の何点かを紹介しておきます。詳細については、本書を手に取って、是非、ご自身で確認してくださいませ。
「邂逅」
「荒砥石」
「観世音菩薩」
「究極の楽天性」
「独自の死生観」
「成長への意欲」
「自分にとっての真実」
「言霊」
「深い縁」
「奇跡の一瞬」
等々です。
人間として成長することを求めた結果、著者は結果的にマネンジメントの道を選択したようです。
『人間が出会い、巡り合い、互いの一瞬の生を、精一杯に生きようと、歩んだ。一瞬の生と一瞬の生の深い交わりの中で、互いに成長しようと、支えあった。
それは、いかなる仕事、いかなる事業よりも素晴らしい「最高の作品」なのです。』(P223より)
文章:justice