海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。
第七回は、「web3とブロックチェーン技術の可能性と問題」と題して、新しい時代のウェブ技術がひらく未来の展望と負の側面について見ていきます。
web3(あるいはweb3.0)は、web1.0、web2.0につづく第三世代のウェブについての発展途上の概念です。
web1.0においては、企業が作成したウェブページがネット上をほぼ埋め尽くし、多くが静的コンテンツで一方通行のコミュニケーションが主でした。
web2.0では、ソーシャルメディアの登場が個人のウェブ作成能力を高め、動的なコンテンツが増大しつつ双方向のコミュニケーションが成立しました。
しかし、それはGoogleやAmazonといった巨大プラットフォーム企業、FacebookやTwitterなどの主要ソーシャルネットワークが関与し、ユーザーのデータを吸い出し利用することで巨大な利益を生む構造があらわとなり、中央集権的な組織が個人を搾取するようになってしまいました。
これは、ウェブが世界に登場したときに理想とされた民主的なあり方からはほど遠いものです。
web3は、暗号資産と同じく、主としてブロックチェーン技術を用いてウェブを完全に分散化しようとするものです。
ブロックチェーンでは、インターネット上の取引データが暗号化され、誰もがアクセスでき信用できる公開された台帳に記録されます。その際、特定の誰かがその台帳を管理するのではなく、すべての参加者が自律的に取引履歴をコピーしつづける「自律分散型システム」をとっているために、不正や改ざんが非常に困難となり、システムがダウンすることがなく、記録を消去することができません。
web3では、この技術を用いることで情報の分散化がはかられ、特定の企業が個人情報を握ることによるプライバシーの問題を解決したり、セキュリティレベルの向上を実現することが可能となると見られています。
いいことづくめのように思えるweb3ですが、さまざまな負の側面の可能性もあります。
分散型ネットワークにおいては規制がむずかしい、ということが法学者などから懸念の表明がなされています。
詐欺などのサイバー犯罪、ネットいじめなどオンライン上での嫌がらせ、ヘイトスピーチ、違法画像等の投稿…
こうしたものを規制し防ぐことが困難になるのではないかと言われているのです。
NFT(非代替性トークン)は、あるデータの唯一性を保証するものですが、データとして扱うことのできるものは何でも証券化できる世界になると、さまざまな危険な取引や詐欺も多く発生してしまいます。
実際、持ち逃げなどの事件が起きています。
これは、オンライン上の偽の身元をよそおった開発者が、新しいトークンや通貨を発行すると話しを持ちかけ、集めた資金や暗号資産を全て持ち去ってしまうといったものです。
米証券取引委員会(SEC)トップは、暗号資産は全般的に「無法地帯」であり、規制強化が必要だと述べています。
新技術に懐疑的な人のなかには、web3の基幹となる技術が無限連鎖講そのものであると主張する人もいます。先行者利益だけが存在しあとから来たものは損をするだけのねずみ講である、というのです。
web3関連企業に関与しているのはベンチャーキャピタルであり、既存秩序を塗り替えて乗っ取ろうとしているだけだ、という主張もあります。
このように、web3には良い面と負の側面とがあります。
web3という概念そのものがいまだ発展途上にありはなはだ曖昧なものであるなか、これからの世界を激変させてしまう可能性を秘めているものなので、興味をもって動向を注視していきたいものです。
文章:増何臍阿
画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/28423685588/d29cd332c0/
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