美術の先生の話。
先生がまだ美術大学の学生だった頃。
若い女性が先生の元にやってきて、女性本人の肖像画を描いてほしいと依頼してきた。
それから数日間、女性本人が先生の元にやってきてモデルをした。
完成が近づき、あとは仕上げという段階になった時、女性は絵を配達するように頼んだ。
配達先は後日連絡すると言う。
先生は快く引き受けた。
ところが、絵が完成したというのに、いくら待ってもなかなか連絡がこなかった。
半年ほどして、ようやく女性から電話がかかってきた。
配達先と、そこにいる人に絵を渡すように伝えてきた。
翌日、配達先を書き記したメモを頼りに指定された場所に行くと、そこは墓地だった。
墓地には人が数人集まっていた。
先生はその中のひとりの男性に声をかけ、絵を見せた。
男性は絵を一目見て驚いた。
絵の女性は、その男性の娘で1週間前に亡くなったという。
そして、その場所がその女性のお墓の前だった。
文章:百百太郎
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