たった一駅なのですが、通学で電車を利用していました。
毎朝、通勤通学ラッシュでいつも満員、ドアに挟まれないように乗り込むのがやっとです。
ある時、ぎゅうぎゅう詰めの車内から何気に外の風景を見ていると、線路横の道路を自転車で移動しているサラリーマン風の男がいました。
その人はわたしと目が合うと、電車と競争するかのように必死で自転車をこいで追いかけてきました。
当然追いつけるわけがなく、やがてその人は見えなくなっていきました。
- なにいまの? -
わたしは駅に降り立つと、人波の前方に同じクラスの友人が歩いているのを見つけました。
友人に追いつき、
「さっき自転車に乗った変な人いたよ」
と言うと友人も
「ああ、俺も見た」
わたしたちはしばらくその事で、笑い合いながら歩いていました。
「ちょっと待って・・・」
友人は突然立ち止まり、しばらく考えてから言いました。
「俺は左側の窓にいたのに、なんで右側の窓にいたお前も同じ人を見てるんだ?」
文章:百百太郎
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