ある若い役者さんの話。
その日、早めに楽屋入りして、出番まで仮眠をとっていた。
ふと、目を開けると、辺りは真っ白な煙が立ち込めていた。
「火事だ!」
慌てて起き上がろうとするも、体が動かない。
金縛りにあったようだ。
どこからか「クスクス、ウフフ」と女たちの笑い声がする。
見上げると、煙の合間から、白い顔の女たちがこちらを見下ろしていた。
やがて金縛りがとけ、部屋を飛び出し、ベテラン俳優の楽屋へ駆け込んで、今起きたことを話した。
それを聞いたベテラン俳優は、昔この辺りで何人もの若い女性が犠牲になった、大きな火事があったことを話した。
その霊がまだ浮かばれずに、時々出るのだという。
京都のある撮影所での話だ。
文章:百百太郎
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