今回は、小説の紹介をしていきたいと思います。
『やめるときも、すこやかなるときも』という小説を読みました。作者は窪 美澄さんという方になります。
主人公の過去
壱晴は高校時代に真織という女性と出会います。最初は距離を取っていたものの、二人は次第に親しくなっていきます。
真織の父親が酒癖の悪いと知ったあとも、結婚する願望を捨てませんでした。彼にとっては本気で愛していた初めての女性でした。
二人の別れは唐突にやってきます。真織は父の大切にしていた、自転車に乗車していたときに不幸に見舞われます。猛スピードで走行していたトラックに轢かれて死亡します。壱晴は彼女の死を呆然と見つめることしかできませんでした。
彼の初恋は思ってもいない幕切れを迎えることとなりました。
真織の死後
壱晴は大切な人が目の前で死んだショックからか、事故の前後の日時になると声を出せない病気に苦しむことになります。(記念日反応)医師や知人は治療するように忠告するも、当人は耳を傾けませんでした。
声を出せない持病を抱える人間はどこも雇ってくれないだろうという理由で、壱晴は家具職人としての道に進むことになります。コミュニケーションは最低限で済むため、発声できないハンデもあまり気にする必要はありません。
壱晴は先生との腕の差に戸惑いながらも、家具職人としての腕を磨いていくことになります。
偶然の出会い
壱晴は知人の結婚式で、会社員の桜子と出会います。真織と似ている部分を持つ女性に興味を抱くようになりました。彼女ならば傷を埋めてくれるのではないかと思い、距離を詰めたいと考えるようになります。
壱晴の本心は数ヶ月と絶たないうちに見破られてしまいます。桜子に初恋の相手の分身を求めていることを知られてしまい、関係は終焉を迎えそうになります。女性に愛想をつかされてもしょうがないような、不純な動機では相手も納得しないでしょう。
次第に顔を合わせる機会は減少し、自然消滅する一歩手前まで行きました。それでも、彼は諦めずにプロポーズをします。桜子に思いは届いたのか、二人の関係は進展していくことになります。
入籍を前提とした同棲生活をはじめるところでストーリーは終わりを迎えます。
感想など
*男性は初恋の女性と似ている人を求めてしまうのは、自分と似ているかなと思いました。初恋は高校時代かつ長期的に異性を本気で好きになれてない部分は主人公と同じなので、同じ境遇になったら本気で交際してみたいと思うようになるかもしれません。
*私の場合は初恋の女性は近くに住まいを構えています。いなくなってしまうのと、他の異性と結婚した場面を見なければならないのは死ぬよりもつらいことといえるのかもしれません。
*時系列は行き来するものの、違和感なく読み啜られるのは文章力の高さからきていると思います。
*小説は壱晴、桜子の双方の感情を描いています。どちらも結婚したいと思うのに、一直線で行かないところは現実しさを感じさせます。
文章:陰と陽