「ご飯を食べようよ」
心愛は眠っている旦那の雅也に優しく声をかける。柔らかい声に心地よさを感じたのか、夫は目をゆっくりとこすっていた。
「あなた、今夜のご飯は豚汁、野菜炒め、卵焼き、納豆だよ」
納豆は有機の豆を選択。雅也はこのタイプを用意すると、ものすごく喜ぶ。柔らかいほほえみを見ていると、気分がハッピーになれる。
心愛はゆっくりとお腹をさすった。ここには新しい生命が宿っている。数ヶ月後には、地上に誕生していることだろう。
雅也の仕事は順調で新しい生命が誕生しようとしている。心愛一家は幸せの絶頂期を辿っているといえる。
心愛は手を合わせて、天にお祈りする。幸せな生活がいつまでも続きますように。
雅也は手を合わせたところを指摘した。
「心愛、何をしているの」
心愛は新しい生命を感じ取った。お腹の中を激しく行き来している。
「幸せな家庭が続くようにお祈りしているの」
雅也も同じだったようだ。
「そうだな。結婚は人生の墓場といわれているけど、俺達はうまくいくといいな」
二人は阿吽の呼吸で手を握った。スープさながらに、温かさが身体に浸透していく。
天をゆっくりと見上げた。蛍光灯の明るさが、二人の幸福度合いとマッチングしているように感じられた。
幸せそうな二人に女神がおまじないをかける。健康祈願、恋愛成就のパワーを与えられたのか、絆はより一層強くなっていた。
文章:陰と陽