こんにちは、今回は第二次世界大戦中、強制収容所の被収容者だった心理学者「ヴィクトール・E・フランクル」の体験記録『夜と霧』をご紹介したいと思います。
強制収容所ときいてみなさんは真っ先に何を想像しますか?
労働? 食事? 病気? 暴力? 衛生? 本書では挙げた話題はすべて書かれていてそのどれもが、辛く劣悪なものでした。
たとえば、普段食事は水のようなスープと小さなパンだったそうです。もちろん栄養など足りるわけもないのですが、労働の褒状としてタバコが配られたのだそうです。
そして、タバコは物々交換でスープに代わったようで、タバコがあれば少しの間ですが確実に命を繋ぐことができました。
しかし、その中で日々を楽しむためにタバコを吸いだす仲間が現れると行き詰ったなと周囲は感じ、実際生き続けることはなかったそうです。
つまり、単純に食事が満足に得られなかっただけでなく働いた対価がタバコで、それも腹の足しにもならないスープ飲むかタバコを吸うかのほぼ二択という、食事だけでみてもこういった過酷な場所だったと理解することができます。
収容前、人々は最低限の荷物(財産)を持ち、列車に乗せられアウシュヴィッツ駅に着いた後、荷物を検められ金品を取り上げられるということを皮切りに理不尽なことが淡々と綴られています。
そこに誰かの気持ちなどはほとんど記されておらず、ただ体験があるのです。しかし、そのすべてを自分に置き換えると耐え難い苦しみだと感じます。
さらに衛生状態も悪く、シラミによる発疹チフスが蔓延しており、そのまま死に至ることもあります。
働けなくなったり、不健康とみなされるとガス室送りになるので、少ない睡眠時間の中でシラミを取ったり、自身を健康に見せるために髭を剃ったりする時間を必要としていた事実にも驚愕しました。
また、本書の文章は普段私たちが話したり、思ったのではでてこない表現のものがあり、そういった部分でもこの強制収容所の恐ろしさを実感します。
例えばこういった表現があります。
《体が自分自身をむさぼりはじめたのがよくわかる。有機体がおのれの蛋白質を食らうのだ。》
ヴィクトール・E・フランクル,池田香代子訳『夜と霧』みすず書房,2002年,49頁
これは身体がやせ細っていくことを書いた文章です。ここまで酷く残酷な表現をあの場所では、思い起こさずにはいられなかったのでしょう。
また、興味深かったのが、クリスマスを過ぎたあたりで被収容者がたくさん亡くなったという話でした。
これは被収容者がクリスマスには家に帰れるという淡い期待をしていて、それが破られたからではないかと本書では説明されています。
そして心理学者の体験記ということもあり、この本ではそういった視点での収容所をみることができ、記録としても強い意味があると思います。
アウシュヴィッツ強制収容所は負の遺産といえますが、こういった記録は人を戒めるために活かしていかなければいけないのではないでしょうか。
文章:マフユノダリア