コラム

ショートショート『罪を照らす青い宝石』

頬のこけた男が集落にやってきたのは、夏も終わろうとする頃であった。

村人たちは警戒した。
男は地質の調査をしていると言っていたが、村人たちは何のことやらわからず、何か良からぬことをするためのフリではないかと疑った。

村長の命令がくだり、村の屈強な若い衆三人で男を殴殺してしまった。

とどめの一撃で男が倒れこむ瞬間、男の両眼からまばゆく青白い光が発せられた。
すると男の身体はみるみるうちに朽ちてゆき、二つの青い石だけが残った。

美しく光る青い宝石は、その後市場において取引されるようになる。
資産家令嬢のSは、婚約者の青年からその青い宝石のブローチを贈られた。

それからというもの、Sは不眠に悩まされることとなった。
毎晩悪夢を見るのだ。その悪夢は、未開の男たちによって殴り殺される夢であった。
Sは宝石商にそのブローチを手放したのであった。青い宝石の行方は誰も知らない。

地球科学の研究者たちが、調査をしていて行方不明になった博士の業績を顧みる催しを開いた。
その際、研究者たちの間で話が上がり、博士が行方知れずとなった地方の村を訪れることになった。

聞き込みをしてみると、村の者は一様に顔に影を落とし、何かを知っているようでありながら沈黙を決め込んでいた。

罪の念に耐えきれなくなった一人の女が叫んだ。
「あたいらがやったんだよ!」

 

 

画像提供元:https://visualhunt.com/f7/photo/14740491878/9c655cc2a1/
文章:増何臍阿

関連記事

  1. もっと本を読もう! もっと活字に触れよう!
  2. オースター『最後の物たちの国で』のご紹介
  3. 寝る前の時間の過ごし方
  4. 「善き友」を求めていきたい
  5. 怖い話:『蹴りたいドア』
  6. ショートショート『無謀なチャレンジ』
  7. ネジが人を台無しにするとき
  8. エッセイ:『精進について』

おすすめ記事

私が使っていた化粧品

化粧品ってピンきりですよね。 いい化粧品は使いたいけど、消耗品なのでそこまでお金…

岡本太郎が作った「歓喜の鐘」がある名古屋『久国寺』

 大阪万博の『太陽の塔』。あるいは「芸術は爆発だ」の発言で有名な芸術家の岡本太郎。…

『あなたの…』―優しさが時に苦しめるー

あなたの…その優しさが…時より…&nbs…

『暖かな…』―4月新年度になるー

暖かな春が…今年もやってきた。入学…&n…

ショートショート『大きな世界に飛び込むのを応援する彼女』

 達也は物心ついたとき時から、絵を描くのが大好きだった。 他人にはなかなかいえな…

新着記事

PAGE TOP