大学生の友人とドライブをしていた時のこと。
交通量の少ない田舎道ですいすいと車を走らせていた。
一方通行に入ると、前方にトロトロと走る軽自動車に出くわした。
「早く行けよ」
などと言いながら見ると、初心者マークが付いている。
高架下の坂道で信号待ちになり、その車の真後ろに付けた。
友人は面白がって、ギリギリまで相手の車に寄せる。
相手はバックミラー越しに、こちらの様子を覗ってきた。
ミラーに映ったその顔は、中年男性だった。
怒ったような顔でジッとこちらを見てくる。
「青になったら抜くぞ!」
そして、青信号で走りだし、広い車線に出ると、あっという間にその車を抜いた。
抜き去る際に相手の運転席を見ると、そこに居たのは若い女性ひとりだった。
その車が見えなくなるまで、スピードを上げたのは言うまでもない。
文章:百百太郎
画像提供元 https://farm3.static.flickr.com/2414/1793458105_6e8032a1f0_c.jpg