インターホンが鳴った。
ドアホンの画面を見ると、伊勢丹の紙袋のようなチェック柄のスーツを着た男が立っていた。
見るからにうさんくさい。
「**荘をお持ちじゃないですかぁ」
と満面の笑みで話してくる。
**荘を所有しているのは親戚で、うちではない。何かしら情報を間違って得たのだろう。
売却を勧めに来た不動産屋かと思った。
「いや、うちじゃないですね」
親戚のことは伏せておいた。
その場は追い返したものの、その後なんどもそのセールスマンはやってきた。
「お墓のご準備はいかがですかぁ」「外壁の塗装がはがれてますね」などなど、
その時ごとに売るものが違う。いったい何なんだと訝った。
いろんな業者が外注した営業を一手に請け負う会社なのか。
そんなものがあるというのか。
その後ピタッと来なくなったと思ったら、その男がテレビで漫才をしていた。
伊勢丹の紙袋のようなスーツを着て。
文章:増何臍阿
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