9歳の頃、父親に連れられて名古屋の親戚の家へ行った時のこと。
わたしにとって初めて会う親戚だ。
事前に父親から、男の子がいるから一緒に遊んでもらいなさいと言われていた。
父と親戚のおじさん達が食卓テーブルでお酒を飲みながら、会話を弾ませている中、わたしは隣の居間でひとり退屈していた。
そこにギシギシと階段を下りてくる音がした。
襖が開き、わたしと同じくらいの男の子が顔を出した。
だが、その子はわたしを認めた後、襖を閉めて2階へと戻っていった。
『恥ずかしがり屋さんか』
わたしはその場に大の字になって時間を潰していると、そんなわたしを見たおじさんが2階に向かって
「おーい、○○が暇そうにしとる。遊んでやれ」
と声を掛けた。
ドタドタと階段を駆け下り、襖が開いて姿を見せたのは、大学生ぐらいの大柄な男子だった。
帰りに父親に聞いた。
「あの家、もうひとり男の子いるよね?」
「いや、一人っ子だよ」
文章:百百太郎
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