コラム

『友がみな我よりえらく見える日は』(幻冬舎アウトロー文庫)のご紹介

 

本書は、上原隆によるノンフィクションです。

著者の上原氏は、評論家の鶴見俊輔を師匠とするライター・コラムニストです。

 

「ひとは、こころが折れたとき、なにを支えに生きていくのか」

というテーマで、市井に生きるふつうの人々を取材します。

 

タイトルは、石川啄木の歌集「一握の砂」のなかの以下の代表的な短歌からもじったものです。

 

友がみなわれよりえらく見ゆる日よ

花を買ひ来て妻としたしむ

 

 

 

病気に苦しむ人や容姿に悩む人、失業問題や人間関係に悩む人など、ごくごくありふれた普通の人に対して、著者はインタビューをします。

 

世間で話題になるのは有名人や著名人であり、ふつうに生きる私たちと同じような人たちが

本当のところどんな風に生きているのかを知る機会はあまりありません。

 

レビューなどでは、つらい立場の人の話を読んで他人の不幸を喜ぶ後ろ向きな本だという評価もあり、たしかにそれはそうかもしれません。

 

しかし、そういうものが必要な時というのもあるし、仕方ないところもあるので、あまり追い詰めて考えないほうがいいということもあると思うのです。

 

前向きにパワフルに生きている人は手に取る必要のない本ですが、つらいのは自分一人ではないことを知る意味でも、自分を支えるための一助となり得る本なのではないでしょうか。

 

 

文章:増何臍阿

関連記事

  1. 楽しみ
  2. 要領よく生きるのはいいことか
  3. ルイス・スアレスの涙
  4. コロナ禍の区切り、だが。
  5. 小説:『出会いはどこから転がり込むかわからない 上』
  6. 残念賞はない
  7. 松本俊彦『薬物依存症』(ちくま新書):ケアを考えるシリーズ4作目…
  8. 井の中の蛙はヤドクガエル

おすすめ記事

タクシーの年齢条件変更について

一定の条件を満たした地域において、個人タクシーの営業は80歳まで認められることになります。年…

【サッカー】伝説の選手、ヤリ・リトマネン

今回ご紹介するのは、フィンランドの伝説、ヤリ・リトマネンです!&…

高校野球の球数制限

  高校野球で一週間の球数を500球までとする案を発表した。3年間は様子見のため、ペ…

『ご褒美を…』―頑張った自分にご褒美をしてあげよう―

一週間頑張った。自分に…ご褒美を。&nb…

物語の一巻目を簡単に解説! 第七回【あつまれ!ふしぎ研究部】

第七回は少年チャンピオン・コミックスから【あつまれ!ふしぎ研究部】著 安部真弘です。…

新着記事

PAGE TOP