コラム

短編小説:『ふしぎなおとしもの』

 

町を歩いていると、おかしなものを見つけることがある。

 

ある時は、橋のたもとに一足のちいさな靴がきちんと揃えられて置かれていた。

またある時は、川(川幅は3、4メートルほど)に赤い布団が投げ捨てられていた。

またある時は、線路沿いに1メートルを超えるテディベアがたたずんでいた。

 

これらはいわば違法に捨てられたごみなのだが、食品のプラスチック容器とか

タバコの吸い殻とかとは違って、無造作に投棄されたというものではない。

ポイ捨てしたという感じがまったくしないのである。

投棄物たちがなにか奇妙な趣きとでもいったものを醸し出しているのだ。

 

先日、町を歩いていると道端にどんぐりが落ちていた。

はて、季節は夏真っ盛りのいま、どんぐりが落ちているなんておかしい。

 

そのどんぐりは、よく見ると普通のものよりうっすらと黄味がかっていて、見ようによっては黄金色に見えないこともなかった。

わたしはなんとなくそのどんぐりが気に入り、家に持ち帰ることにした。

 

 

それからのわたしは数々の幸運に恵まれる。

 

遠い親戚から遺産が転がりこんできたり、家族や友人や職場の同僚の機嫌が良くなったり、

かねてからの持病の症状がやわらいだり、下半身が元気になったりした。

 

わたしはこれらの幸運を、道端で拾ったどんぐりと結びつけて考えるようになり、旅行先の土産物店で見つけたちいさな木箱に入れて、机の引き出しにひっそりと大事にしまっていた。

 

 

歳をとり、わたしは不治の病にかかった。

 

あのどんぐりの入った木箱を開けてみると、黒ずんであの輝きは失われていた。

わたしはどんぐりを捨てた。

 

まもなく、意識が遠のいていった。

 

 

文章:増何臍阿

 

画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/22371282858/f01c1dac58/

 

 

関連記事

  1. 個人的に、息苦しい昨今。
  2. 深田萌絵『ソーシャルメディアと経済戦争』扶桑社新書
  3. いつの時代も主婦は大変
  4. A型作業所に通いながら、日商簿記3級を取ってみた!!
  5. 映画『裏窓』をご紹介
  6. 才能は天性だったとしても、努力を怠ってはならない
  7. 中島義道『ウソつきの構造 法と道徳のあいだ』角川新書
  8. 荻原魚雷『本と怠け者』ちくま文庫 のご紹介

おすすめ記事

車の速度に下限を設けたほうがよいのか?

一般的な車道では最高速度は決められているものの、下限については決められていないことが…

特別採用枠を求めて動き出した求職者

  氷河期世代(1993~2004年頃に学校を卒業)を対象とした、兵庫県宝塚市の正規…

ホラー:『不可解な出来事1』

 買い物に出かけようとしていたときの出来事です。どういうわけか履いていた靴がなくなっ…

メンタル疾患の人に

心を病んでいる人には、思いやりややさしさなどが必要であると思います。&n…

喫煙率の低下

 喫煙率は年々低下傾向にある。 厚生労働省のデータによると、昭和40年時点では男…

新着記事

PAGE TOP