サスペンス・ホラー

怖い話『何かいた』

 

大学時代の友人の話。

 

地元が海の近くの友人は夏になると、仲間たちとよく海で泳いだそうだ。

しかし、少し離れたところに泳いではいけないとされていた小さな入江があった。

そこは、表面的には波が穏やかでも、海面の下のほうは流れが複雑で足元が救われ、引き込ずり込まれてしまうという。

だが、潮が引いた岩場へ、取り残された魚を獲りには、行っていた。

 

その時も、仲間の一人と泳ぎに飽きた頃に、魚がいないか見に行った。

 

岩場をあちこち見ていると、

 

「おーい」と声がした。

 

見ると、仲間がそこで立ち泳ぎしていた。

 

「気持ちいいぞー、お前も来いよー」

 

と言う。

 

『なんだ、意外と平気なんだな』

 

と、友人は、誘われるままそちらへ行こうとした。

すると、

 

「何かいた?」

 

と背後で声。

それは泳いでいるはずの仲間だった。

ハッとしてもう一度、海に目を向けた時には、そこに何もいなかったという。

 

文章:百百太郎

 

画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/15136413178/211225e011/

 

関連記事

  1. 怖い話『二階の子供』
  2. 怖い話『午後の授業中の怪』
  3. 怖い話『握り返してきた手』
  4. 怖い話『ボンネットの女の子』
  5. 怖い話『お母さんがいない』
  6. 怖い話:『夜中の子供』
  7. 怖い話『抜け道』
  8. 怖い話『茂みの中から』

おすすめ記事

『SUN and MOON』

悲しいとき、辛いとき、何気なくでいいから空を見てごらん?&n…

自己完成を目指して

日々怠ることなく自分を見つめ、自分を磨き、常…

福祉事業所(A型事業所、B型事業所)の通所をやめるタイミング

 A型作業所、B型作業所、就労移行支援事業所を変えたいという当事者もいるのではないで…

「苦しい」が「楽しい」に変わる「つらい」を科学的になくす7つの方法

「苦しい」が「楽しい」に変わる「つらい」を科学的になくす7つの方法…

目的とは反対に進んでいる【障碍者編】

 就労移行やA型作業所の本来の目的は、一般就労を目指すことにある。 現実はそうは…

新着記事

PAGE TOP