前野隆司著『実践ポジティブ心理学』のまとめ【第二回】
はじめに
「ポジティブ心理学」は、90年代にアメリカ心理学会の会長であったマーティン・セリグマン氏が提唱したもので、海外の学会でも大きな話題となり、ハーバードなどの講義でも人気になっているといいます。
ポジティブ心理学は、それまでの臨床心理学のように心の病を対象とするのではなく、普通の人が「どうすればもっと幸せになれるのか」を追求する分野です。
「マインドフルネス」や「レジリエンス」もポジティブ心理学の重要なキーワードです。
基本的には普通の健康状態にある人向けですが、著者は、心の病にかかっている人も生きるヒントを得られると言っています。
第二回は、「幸せのための条件とは?」ということで、第二章のまとめです。
幸せのための条件とは?
「ポジティブ心理学」の概念を打ち出したセリグマンは、もともとうつ病の研究者であり、「学習性無力感」という概念を提唱したことで知られています。
学習性無力感というのは、長期間回避できないストレスにさらされ続けた人や動物は、しまいにはその状況から逃れようとする自発的な行動をとらなくなるという現象です。
ボタンを押すと犬に電気ショックが与えられるという実験を通して、うつ病というのはもともとネガティブな人がなるというのではなく、だれでも強いストレスに長いあいださらされるとなりうる病気なのだ、ということを示しました。
セリグマンは、それまでネガティブな状態にフォーカスしていたのに対して、人々をより幸せにするための学問を目指そうとします。
そのなかで、セリグマンは、ポジティブ心理学はFlourish(繁栄、栄える)のためのものだと強調します。人生に花を咲かせる、そのための学問なのです。
わたしたちのボスフラというサイトの名前の由来は「共栄(共に栄える)Both Flourish」から来ています。
なので、ポジティブ心理学の目指すところはボスフラと同じなのです。
PERMA~幸せのための五つの条件
セリグマンの著書『Flourish』では、「PERMA」という幸せのための五つの条件が出てきます。
・Positive Emotion(ポジティブ感情)
・Engagement(エンゲージメント)
・Relationships(関係性)
・Meaning(意味・意義)
・Achivement(達成)
PERMAとはこれらの頭文字をとったものです。
Positive Emotionとは、前向きな感情やよいフィーリングのことで、それらをもつと人生をよりよくできるということです。
Engagementとは、今の活動に没入すること。何かに没頭して集中すること。フローの概念を提唱したチクセントミハイは、エンゲージメントとはフローのことだといいます。
フローに入る体験を積むことで、幸せに近づきます。
Relationshipsとは、周りの人たちと本質的に繋がっていることが幸せに寄与するということです。良い人間関係が幸せをもたらします。
Meaningとは、人生の意味であり、夢や目標、何のために生きているのかということを常に問うことです。
Achivementとは、何かをやりとおした感覚のあるひとは幸せだ、ということです。
MeaningやAchivementは個人主義的な要素が強く、まさにアメリカから生まれたもので、日本もそうした傾向をアメリカから影響を受けているので参考にはなるとしつつも、日常を周りの人たちと穏やかに過ごすことも重要だと著者は主張しています。
さらに、第二章ではレジリエンスに関することが紹介されているのですが、長くなるので第三回のコラムで紹介させていただきたいと思います。
文章:増何臍阿
関連記事