サスペンス・ホラー

怖い話『ずぶ濡れの人』

 

残業を終えたわたしたちは、帰宅を急いでいた。

今日は夜から天気が崩れるという予報で、みな雨が降らないうちに帰りたい一心だった。

 

階段の踊り場まで来ると、夜勤出社らしき人がそこに立っていた。

その人はカッパを着てずぶ濡れだった。

 

それを見たわたしたち残業組は、

 

「もう降っているのか」

 

と、おのおのロッカー室に引き返し、置き傘を取りに戻った。

わたしがロッカー室を出ると、先に傘を持って出て行った人がすごすごと戻ってくる。

 

「どうしたんですか?」

 

「雨降ってないよ。降った形跡もない」

 

「じゃあ、さっきの人は?」

 

ずぶ濡れの人が立っていた辺りを見ても、そこは濡れてもいなかった。

 

文章:百百太郎

 

画像提供元 https://visualhunt.com/f6/photo/54330413/5905b20601/

関連記事

  1. 怖い話『もう一人の住人』
  2. 怖い話『開けてください』
  3. ホラー:『不可解な出来事2』
  4. 怖い話『壁の中から』
  5. 怖い話『廃墟ビルの鉄扉』
  6. 怖い話『犬が追うもの』
  7. 怖い話『ジロジロ見るんじゃないの!』
  8. 怖い話『取りに来て』

おすすめ記事

一日のうちに楽しむ時間を作ろう

メンタルを病んでいる人は、多くの時間をネガティブなことを考えることに使いがちなのではないでしょうか?…

心の拠り所

あなたには、心の拠り所というものがありますか?心の拠…

遺産相続で、もめないために

 直系の家族に不幸があった場合、子供や孫は遺産を相続することになる。 遺産とは死…

東北からは、どのチームが甲子園に出場するのか

 来春の甲子園をかけた東北大会は幕を閉じた。 東北大会の結果を下…

創作『天上からの密かな企み』

神様1「地球を荒らしまわっている人間に天罰を下そう」神様2「どのようにいたしまし…

新着記事

PAGE TOP