サスペンス・ホラー

怖い話『ずぶ濡れの人』

 

残業を終えたわたしたちは、帰宅を急いでいた。

今日は夜から天気が崩れるという予報で、みな雨が降らないうちに帰りたい一心だった。

 

階段の踊り場まで来ると、夜勤出社らしき人がそこに立っていた。

その人はカッパを着てずぶ濡れだった。

 

それを見たわたしたち残業組は、

 

「もう降っているのか」

 

と、おのおのロッカー室に引き返し、置き傘を取りに戻った。

わたしがロッカー室を出ると、先に傘を持って出て行った人がすごすごと戻ってくる。

 

「どうしたんですか?」

 

「雨降ってないよ。降った形跡もない」

 

「じゃあ、さっきの人は?」

 

ずぶ濡れの人が立っていた辺りを見ても、そこは濡れてもいなかった。

 

文章:百百太郎

 

画像提供元 https://visualhunt.com/f6/photo/54330413/5905b20601/

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