高校の頃、M君という同級生がいた。
M君は格好つけるところがあった。
関西でいうところの、「ええかっこしい」というやつだ。
自分の髪をいじりながらポーズをとったり、トイレの鏡を長いこと見つめたりする。
ナルシスト気味のところがあり、それは本人も認めていた。
反面いくぶんお茶目な感じもあり、笑いに変えたりする頭の良さもあって、憎めないキャラクターであり、わりと人気があった。
ただし人気があったのは男子の間だけである。
ある日水泳の授業があった。
授業も終わりにさしかかったとき、M君は他の同級生から、
「M、お前モッコリしてたやろ、何考えとってん!?」
と、からかわれていた。
どうやら、スイミングパンツをふくらましていたようだ。
その時、M君は涼しい顔をしながらそしらぬフリをしていた。
それから数十年の時が経った。
ネットニュースの広告で、M君の名を見つけた。
本の広告であった。著者名がM君なのだ。
M君はネット関連の会社の立ち上げに参画したり色々と成功していた。
それで本も出していたのである。
M君はある会社の社長になっていた。
私は驚いた。
M君がヘッドハンティングされたその会社は、なんとメンズパンツを専門に取り扱う会社だったのだ!
私は笑ってしまった。
数十年の時を経て、大きな伏線が回収されたかのようだった。
その後、日本経済新聞の小さな記事で彼の業績が紹介されているのを見つけた。
彼の活躍に元気をもらうと同時に、なつかしさやほほえましさも感じている。
文章:parrhesia
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