荻原魚雷『本と怠け者』の紹介
著者情報
著者の荻原魚雷(おぎはらぎょらい)は、三重県鈴鹿市出身のフリーライター、エッセイストです。大学在学中から雑誌の編集に携わり、書評やエッセイ(主に古書に関するもの)を書いています。
1989年秋から高円寺に在住。
神保町などの古書店を巡り、喫茶店で過ごし、夜は飲み屋で、朝に眠る。そうした暮らしをしながら、古書や半隠居についてのエッセイを多数書かれています。
取り上げられている作家たち
本書は「ちくま」の連載「魚雷の眼」に書きおろし及び未収録原稿を加えた、文庫オリジナルの古本エッセイです。
取り上げられている作家は、古山高麗雄、梅崎春生、尾崎一雄、ジョージ・ミケシュ、中村光夫など。今では顧みられることも少なくなった作家が多いです。
そのため、読んだことのない作家を知ることができ、本の世界が広がります。
みどころ
働かないわけではないけれど、あくせくしたくはない。怠け者とそしられかねない生き方をした作家たちのことばを引用しながら、著者は日々の暮らしや生き方、ものの考え方について述べていきます。
優雅なように見えて、実のところこのように生きるのは大変苦しい。世の中から一歩引いてものを見、じっくりと考える。
世間のペースに合わせて生きることが難しいひとが、どうやって自分なりの生き方を創り出していくのか。そんな堅苦しいことを考えてもいいし、そうでなくてもかまわない。
ゆっくりと脱力しつつもしっかりとした芯を持つことのむつかしさと勇気について、いろいろと示唆に富んだ考えに触れることができます。
まとめ
本を読むこと以外は「怠け者」である著者が、「本を真剣に読む」とはどういうことか、肩ひじ張らずに身をもってひそやかに教えてくれます。
文章:増何臍阿