サスペンス・ホラー

怖い話『上に行くよ』

 

友人宅があるマンションでの出来事。

友人宅を後にしてエレベーターに乗り込もうとすると、お婆さんがひとり乗っていた。

 

「上に行くよ」

 

そう言われて、見上げるとそのエレベーターは上行きの矢印が点灯していた。

 

「一緒に行くかい?」

 

お婆さんは冗談気にそう言った。

 

「いえ」

 

下に降りるつもりのわたしは自重した。

扉は閉まり、上階へ昇っていった。

 

しばらくすると、さっきのエレベーターが戻ってきた。

ドアが開くと当然さっきのお婆さんはいない。

エレベーターの中はお線香の匂いが充満していた。

そこはお婆さんだからという気持ちで特に気にしなかった。

 

1階に降りてビルを出ると、すぐ近くの葬祭場で棺が運び出されるところだった。

棺の後に付いて行く人が手にしていた遺影には、さっきのお婆さんが映っていた。

 

文章:百百太郎

 

画像提供元 https://visualhunt.com/f5/photo/16051519199/ec04051b5a/

 

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