コラム

ダン・ショート、ベティ・アリス・エリクソン、ロキサンナ・エリクソン-クライン『ミルトン・エリクソン心理療法 〈レジリエンス〉を育てる』春秋社

 

ダン・ショート、ベティ・アリス・エリクソン、ロキサンナ・エリクソン-クライン『ミルトン・エリクソン心理療法 〈レジリエンス〉を育てる』

 

著書のミルトン・エリクソン(1901年~1980年)は、催眠療法家として知られているアメリカの精神科医、心理学者です。

生前はポリオを発症するなど、重篤な障害に悩まされながらも、そうした逆境をバネに変えて、独自の治療方法を確立していきました。

エリクソンは体系的な本を書かなかったようです。その理由としては、それぞれ個人ごとの特性に合わせた対応を徹底したためでした。つまり個別対応に配慮した支援を、終生続けられたからとのこと。

そうして個別対応して得られた知見を、エリクソンの関係者が後年、苦労して体系的にまとめました。

 

要するに本書は、エリクソンの実践の中から生み出された知恵が詰まっている内容となっていて、セラピストが相手(クライエント)の立場で考えつつ、相手(クライエント)が自分の頭で物事を判断(レジリエンス)できるようにするための方法を紹介したものです。

 

 

エリクソンから学んだ6つ戦略を、本書より紹介しておきます。

 

①注意の逸らし(当事者がはまっている枠から意識を外す)

②分割(一度に全てを解決するので話はなく、出来るところから実績を積み上げる)

③前進(完全でなくても、少しだけでも前に進める)

④暗示(不可能はなく、変化は可能)

⑤リオリエンテーション(新たなる方向づけ)

⑥利用(相手が既に持っている潜在力を動かす)

 

この6つの戦略を共時的に使い分けながら、相手の性分を踏まえた予測を立てます。

たとえばマイナス思考の人には、ほんの一歩だけもプラスになるように。

プラス思考の人には、自分自身で決めてもらえるように。

 

繰り返しますが、画一的な対応では改善しません。個別的な支援が基本のようです。

つまり、人に応じて支援の使い分けができるようになること。

 

 

これを実践出来るよう、上記のことを意識しながら支援を行っていくのがエリクソン流のやり方ですが、体系化が極めて困難なため、実践するのはなかなか困難なことです。

 

その他、催眠療法のことが書いていましたが、これについては割愛しました。

 

『複雑な人間の問題に関しては、既製の対応に頼るのではなく、その瞬間に何が起きているのかをよく観察し、そのつど新たな解決法を使って対応する必要があるということだ。もっとも雄弁な構成概念も、もしそれらに刷新と洗練の余地がなければ、問題をもつようになる。』(本書P358より)

文章:justice

 

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