大学生の時、家賃が格安のボロアパートに住んでいる友人がいた。
畳敷きの四畳半で風呂トイレ共同、家賃はわずか数千円だったと思う。
そこは寝泊まりに利用しているだけで、休日前になると車で隣県の実家に帰ってしまう。
なので、部屋には布団と、暇つぶし用のテレビとゲーム機しか置いていなかった。
その友人の部屋で人気の新作RPGをしていると、突然停電になった。
「うわー、セーブしてねえよ!」
と叫ぶわたし。
わたし同様、新作RPGをしていたのだろう、「おい!」とか「うわー!」とか、あちこちの部屋からも悲鳴に似た叫び声が聞こえてくる。
それからも何度か停電は繰り返し起き、その度にあちこちから叫び声がした。
そんなことがあってから数日後、大学の部室に寝袋で寝る友人の姿があった。
あのアパートにはもう戻らないという。
「やっぱり停電か?あれじゃゲーム進められないもんな」
というわたしに友人は言った。
「実はアパートに住んでたの、俺だけだったんだよね」
文章:百百太郎
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