サスペンス・ホラー

怖い話『誰の頭?』

 

3階の自宅マンションにいると、外でガシャーン!と凄い音がした。

 

「何事!」

 

と、ベランダへ飛び出して階下を見ると、人が仰向けで倒れていた。

状況から、スクーターで転んだようだ。

ドライバーは仰向けになったまま、わたしの顔を見ると、照れ臭そうに笑った。

 

「なんだ、大した事なさそうだな」

 

わたしは部屋に戻った。

 

しばらくすると、救急車やパトカーがサイレンを鳴らしながら駆けつけてきた。

その騒々しさから、まるで大事故だ。

 

翌朝、仕事へ出かけようと降りていくと、道路の傍らに花束が添えられていた。

ちょうどゴミ出しをしていた同じマンションのおばさんに、驚いて訊いた。

 

「昨日のスクーターの人、死んじゃったんですか!?」

 

「そりゃあ、頭がもげたんだから、即死でしょうよ。頭は向こうの公園まで飛んで行ってたらしいよ」

 

とおばさんは言った。

 

昨日、わたしに笑いかけてきた頭は、誰のだったのだろう?

 

文章:百百太郎

 

画像提供元 https://visualhunt.com/f5/photo/2248673508/4632914e87/

 

関連記事

  1. 怖い話『デジャブ』
  2. 怖い話『石を投げたら』
  3. 怖い話:『目撃者によって違う霊』
  4. 創作『天上からの密かな企み』
  5. 怖い話『そうですって言っていたら・・・?』
  6. 怖い話『ごめんね』
  7. 怖い話『お入りください』
  8. 怖い話:『止まらないタクシー』

おすすめ記事

怖い話『何かいた』

大学時代の友人の話。地元が海の近くの友人は夏になると、仲間たちと…

怖い話『お前がいないと』

大学の友人の話。大学サークルで合宿に行くことになったが、サークル仲間3人で同じと…

わずかな人間の悪事で社会は窮屈になる

  ごく少数の人間が悪いことをするだけで、生きにくい社会が構築される。 生涯で殺…

教育の大切さ

「植物は栽培によってつくられ、人間は教育によってつくられる」とは、フランスの思想…

ミライロID(障碍者向け)というシステムがある

 障碍者手帳の情報をスマートフォンで管理する、「ミライロID」というシステムがある。…

新着記事

PAGE TOP