夜、寝付けないので、大学の下宿の友人を強引に連れ出して、夜中のドライブに出かけたときのこと。
友人は後部座席に乗り込みました。
何で助手席に座らないのかと聞くと、
「少し眠気があるから、限界になったら横になって寝るわ」
と言うのです。
わたしは友人を寝かせないように、音楽をかけ、一緒に歌うようせがみました。
わたしたちはしばらく陽気に歌っていました。
歌も飽きた頃、前方に白い物がぼんやりと見えてきました。
それは白い着物の女性でした。
わたしがギョッとなっているところに、友人がゲラゲラ笑い出しました。
「こんな夜中に白い着物の女を乗せるわけないよなぁ」
バックミラーで見ると、友人は歌ですっかりハイテンションになってしまっているようです。
友人がいるおかげで、わたしも安心してそのまま車を走らせました。
しばらく走っていると、また白い着物の女が立っていました。
今度は赤ん坊を抱えて手を上げています。
「赤ん坊連れたって停めるわけねえっての!」
バックミラー越しに、友人がゲラゲラ笑って言います。
しばらく行くと、またまた白い着物の女が立っていました。
今度は車の前に飛び込んできました。
わたしは急ブレーキを踏み、車を停めました。
「大丈夫か?」
振り返って後部座席を見ると、友人は横になって眠っていました。
「いつから?」と聞くと、
「音楽流し始めてすぐ・・・音楽聴いてるうちに何だか気持ちよくなっちゃって」
文章:百百太郎