サスペンス・ホラー

ホラー:「光の消えたお化け屋敷」

 

 お化け屋敷といえば怖さを演出するために、真夜中の電気を消した状態に近づけます。人間は暗ければ暗いほど、不安を感じやすくなります。

 

 従来の常識を覆すかのように、このテーマパークのお化け屋敷は明るくなっています。室内に過剰なまでの光を灯すことにより、直射日光を浴びたと錯覚する眩しさを施しているのかもしれません。

 

 溢れんばかりの光に包まれているため、怖さをあまり感じません。どうしてこのような仕様にしたのでしょうか。楽しいお化け屋敷を演出しようとしたなら、「お化け屋敷」ではなく「リラックスルーム」にすればいいだけの話です。隆三はお化け屋敷を作った、担当者の意図をさっぱりつかめませんでした。

 

 リラックスルームさながらの建物を進んでいくと、室内を照らしていたはずの光は全てなくなりました。あたりは一ミリの光すら漏れていません。左右前後をくまなく探しても、灯りになりそうなものは見当たりませんでした。

 

 お化け屋敷のために準備しておいた、懐中電灯をポケットから取り出します。万が一のために所持していたことが功を奏すこととなりました。

 

 灯りをつけようとしても、どういうわけか光はつきませんでした。お化け屋敷の前で購入した、新しい電池と入れ替えたばかりなのに、どうしてこうなってしまうのでしょうか。店の前では不良品を売りつけていたとすればかなり悪質です。

 

 後ろから人がやってきました。隆三は襲われるのではないかと思い、大いなる不安に包まれました。どんな強靭な体であったとしても、真っ暗では対応するのは不可能です。

 

 肩をポンと叩かれました。視界の消えた恐怖からか、隆三は全速力で一五メートルほどを走りました。真っ暗な状態で何もぶつからなかったのは奇跡としかいいようがありません。

 

 後ろから肩をたたいた人物は、隆三の正体に気づいていました。見えていないはずなのに、どうしてわかったのでしょうか。

 

「隆三じゃない。どうしたの」

 

 交際中の美紀に藁も縋る気持ちで助けを求めます。彼女はだらしない男を前にして、呆れたような声を発しました。

 

「なにもないのにどうしたのよ。隆三、熱でもあるんじゃないの」

 

 瞼を開けると、室内は明るくなっていました。先程までは真っ暗だったのは幻だったのでしょうか。

 

 隆三は腑に落ちない表情をしながら、美紀と一緒にお化け屋敷のゴールに辿り着きます。不安を感じていたのか、手を強く握っていました。女性はだらしない男に対して、呆れ、笑いを含ませた笑みを浮かべました。

 

 摩訶不思議なお化け屋敷はもう二度と入らないようにしよう、隆三はそのように強く思いました。

 

文章:陰と陽

 

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