コラム

不思議な話『ポテトチップスが一瞬にして消えた』

 

 男はトイレを済ませたあとに、残りのポテトチップスを食べようとしていると、中身がなくなっていることに気づきました。ほんの数分前までは半分くらいあったのに、どこに行ってしまったのでしょうか。

 

 目を話したのはほんの数分です。窃盗犯では鍵を開けられたとしても、食べるところまで行きつきません。仮に一瞬で食べていたとするなら、かけらがあちこちに散らかっているはずです。

 

 妥当な考え方としては、母に食べられてしまったパターン。ポテトチップスを半分食べるくらい、造作もないことです。慌てて食べなければ、欠片を落とすことなく完食できるでしょう。

 

 男は母親にポテトチップスのありかを尋ねることにしました。胸の内では犯人であると決めつけていますが、そのことは口にしませんでした。むやみに犯人扱いすると、喧嘩に繋がりかねません。

 

「かあさん、ポテトチップスを知らない」 

 

 母の答えは期待していたものではありませんでした。

 

「知らないわよ。あんたが食べたんじゃないの」

 

 男の脳内は一時的な混乱状態に陥りました。母でないのであれば、誰がポテトチップスを食べてしまったのでしょうか。

 

 ポテトチップスは生き物ではないため、己の意志で動いたというのは現実的ではありません。実際に起きたとすれば、怪奇現象としかいえません。

 

 男はポテトチップスを探し続けるも、見つかりません。ポテトチップスごときに、時間をかけていられないと思ったのか、新しいものを購入することにしました。

 

*どうしてなくなったのかというと、母親が間違って捨ててしまったからです。中身は空っぽであると決めつけていた女性は、中身入りの袋を捨ててしまいました。

 息子の前に同じ袋が現れたのは、中を綺麗に洗ったものを偶然保存していたからです。あとは知らんぷりをすることで、見事に責任逃れを達成しましたとさ。

 展開を知らない少年からすれば、ポテトチップスは自分で飛んでいったことになります。不思議な話と名付けたのはそのためです。

 

文章:陰と陽

関連記事

  1. ショートショート『雪の日の幸運(幸せはどこに待っているかわからな…
  2. 松本俊彦『薬物依存症』(ちくま新書):ケアを考えるシリーズ4作目…
  3. 小説:『借金を完済した直後にあの世に旅立った女性は異世界に転生(…
  4. 小説:『友達のいない男は、クラスメイトの男性恐怖症克服に協力させ…
  5. 佐藤 優『官僚階級論-霞が関といかに闘うか』モナド新書
  6. まさにラブファントム
  7. スピリチュアルなDIY!
  8. 事実関係

おすすめ記事

世界の歴史上人物 第2回目 ― ダイアナ妃

皆様こんにちは!椎名 夏梨(しいな かりん)です。…

藤井聡太七冠は前人未到の八冠を達成できるのか

文章:Photo credit: nakashi on Visualhunt.com藤井聡太七冠…

『心の琴線に触れた時』

涙が出た。迫害に次ぐ迫害の人生。平和のため、人類の幸福の…

沖縄観光スポット【ベスト5】②

沖縄を訪れた際、必ず行ってみて欲しい「観光スポット」をご紹介します。…

小説:『ドラッグストアには来たけれど』

上からのしかかるような暑さのなか、のどがカラカラに渇いた状態で、ドラッグストアに入っ…

新着記事

PAGE TOP