男は昼食にカップ麺を食べることにしました。手軽に作れて、エネルギーも多いため一人暮らしにおける必須アイテムです。
引き出しの中には、ラ王、日清のカップラーメン、どん兵衛などがあります。食べたいものを選択できるよう、先週に10種類ほどを購入しておきました。
男は違和感を覚えました。1種類だけ購入した記憶のないラーメンが混じっていました。不気味に思いつつも、これを選択することにします。未知の食べ物に対する不安よりも、食べてみたいという興味が勝ったのです。
ポットのお湯の残量が少なかったため、鍋で水を沸かすことにしました。水の入った鍋をガスの上にのせたあとに火をつけました。家庭で増えつつある、電気ガスタイプです。
数分後にお湯は沸騰しました。男は火を止めると、ラーメンの注ぎ口にお湯を注ぎました。
未知のラーメンは三分待つように書かれていました。男はスマホゲームのミッションをプレイしながら、時間を消化することにしました。
スマホゲームに熱中するあまり、時間の流れを忘れていました。十分後に慌ててふたを開けるも、手遅れなのは確実です。水を大量に吸い、伸びてしまったラーメンを食べることになりそうです。
男は数秒後に違和感を覚えました。お湯を注いだはずの麺がどういうわけか伸びていません。1分ならまだしも、10分経っても原形をとどめているなんておかしいです。
男はどうして伸びないのかを考えていると、「世界初、冷たい水でおいしく食べられるようになるラーメン」と書かれた表示が飛び込んできました。「このラーメンは熱湯を注いでも崩れないよう、特別な処置を施してあります」とも記されています。
カップラーメンは常温の水を注ぐことによって食べられますが、お湯でふやけないタイプはきいたことはありません。誰が不可解なものを作り出したのでしょうか。
男はお湯を捨てると、水を注ぐことにしました。麺がゆっくりと柔らかくなる光景は、従来の常識を覆しました。水を吸い込むことによって、徐々に太くなっていくように見えました。
三分後、水は完全になくなります。麺は水分を吸ったのか、つけ麺さながらに太くなってしまいました。
男はスープを注いだのち、豪快に流し込みました。一流店に負けないコシ、のどごしを感じるではありませんか。未知のカップラーメンに夢中になった男は、一分と絶たないうちに完食してしまいます。
もう一つ食べてみたいという思いから店を駆け回るも、同じタイプのラーメンは見つかりませんでした。
スーパーにないのに家に置かれていたことに、男は恐怖心が芽生えます。身体に悪影響を及ぼさなければいいなと願いながら、家にゆっくりと帰っていきました。
*ラーメンについては常識を覆したい開発担当の男が、郵送物としてこっそり届けたものでした。お湯では伸びないという奇跡の麺を作ることにより、希少価値を生み出そうと考えることにしました。
ドッキリショーを楽しみたいという悪戯心もありました。
文章:陰と陽