コラム

ショートショート『雪の日の幸運(幸せはどこに待っているかわからない)』

 

 失敗続きの一日だったため、メンタルが落ち込んでいた。 

 ゆっくりと天を見上げる。空からは細やかな雪が舞っていた。滅多にみることがないため、目を奪われてしまった。彼女はその場に制止し、掌で白い結晶を受け止める。手に熱がこもっていたため、一秒としないうちに溶けてしまった。

 一直線に帰宅しようとするも、冷蔵庫に食材がないことを思い出した。夕食の買い出しのために、

 徒歩数分のスーパーに足を運ぼうと思った。業務スーパーと比較すると値段はやや高めだけど、疲労のことを考えるとあまり歩きたくなかった。総菜なども売られているので、夕食作りを省略できる手間暇を考えるとお釣りがかえってくる。

 スーパーに向かおうとしている途中の出来事だった。真帆はある対象に目を奪われてしまった。憧れを抱いていた男性とどういうわけか遭遇した。

 顔なじみではないにもかかわらず、男性はきさくに声をかけてきた。フラットだったため、警戒心を解くことができた。

「こんにちは」

 真帆が自分を指さすと、男性は意志を持って頷いた。彼女は心臓をバクバクさせながら、用件を聞いた。

「どうかしましたか」

「失礼なのを承知でいわせてもらうね。よかったらだけど、どこか一緒にいきたいな」

 一緒に居たいと思っていた異性との時間を確保できる。真帆は夢を見ているかのようだった。

「いいですよ。どこにいきましょうか」

「ディナーを食べに行こうよ。お金は僕持ちでいいよ」

 空の粉雪の粒が大きくなっていた。彼女の幸福度を示すかのようだった。

 

文章:陰と陽

 

関連記事

  1. 見世物小屋じゃないよ?
  2. 幸福追求権
  3. 世界の国と国旗☆第93回目 セントビンセント及びグレナディーン諸…
  4. 小説:『借金を完済した直後にあの世に旅立った女性は異世界に転生(…
  5. 短編小説:『事務所』
  6. アンダース・エリクソン、ロバート・プール『超一流になるのは才能か…
  7. 究極の時間術
  8. 生意気な言動には鉄拳制裁

おすすめ記事

幕下における八番相撲

出典:Photo credit: torisan3500 on Visualhunt大相撲の幕下…

怖い話『ガラス越しのポスター』

大学時代の話。実家を出てアパートで独り暮らしを始めた友人がいた。引っ越し先の…

『もし…』―命の炎のタイムリミットー

明日…命の炎が燃え尽きるとしたら…あなたなら…

自由を手に入れた人間

今、人は、自由という最高の宝物を手に入れました。奴隷…

『本当は弱虫』―あたしだけが知って本当の君の姿―

君が周りには…強がりなのを知っている。でも本…

新着記事

PAGE TOP