福祉・医療

「共感力」は意思疎通のツールだが限界もある

 

 他者の苦しみを理解する能力は、肝心な部分が欠如しているような気がしてならない。

 息を切らしている人がいるとする。苦しそうだということはわかっても、どれくらいなのかはわからない。緊急性を要するのか、ちょっと休ませれば回復するのかを適切に判断するのは難しい。病気の対応を間違えたことで、死亡した事例もある。

 他者の欠点を指摘して、修正するように促す人を良く見かける。いいことをしているつもりなのだろうけど、具体的な改善策を示せないのであれば口出ししない方が無難。下手なアドバイスによって混乱してしまいかねないし、当人は自覚しているケースが多い。 

 福祉の現場ではより顕著になる。今回は障碍者支援について取り上げる。

 支援者が知的障碍者の能力の低さを理解したとしよう。それだけでは意味をなしていない。当事者にどのような苦しみを受けているのかを完璧にわからなければ、意思疎通につながっていかない。ハンデを持っていることを知るのは、100点中で10点くらいにしかならない。残りの90点はどれだけ分かり合えるかにかかっている。

 支援者が知的障碍の苦しみを、真の意味で理解するのは高齢になってからだろう。身体障碍、痴呆症などを経験することによって、初めて知的障碍者の話の意味を理解する。現役である限り、本物の意思疎通は叶わない。

 能力の高い人についても同様。エネルギーを消耗しやすいことを知っても、一般比でどれくらいなのかを完璧にわからなければ適切な対応を取れない。これくらいだろうという感覚で済ませるのは間違いだ。情報を共有しても真の意味を理解できないのあれば、時間を割いて話をする意味はない。

 障碍者支援では支援者が障碍をわかってくれないという話をよく耳にする。研修を重ねた時間は完全に無駄に終わっていることを示している。 

 一人一人が他者の苦しみについて理解を深める。容易ではないけど、取り組んでいかなければ、お金しか価値がない人間に成り下がる。金や物でしか他人を満足させられないのであれば、使い捨て同然のカイロさながらの人生を送ることになりかねない。それを避けたいのであれば、第三者の感情を理解できるように取り組んでいきたいところ。

 

文章:陰と陽

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