コラム

ショートショート『近未来の高齢者の行く先』

 

   高齢者の割合は増え続ける。二〇二〇年時点ではそのようにいわれていた。

 二〇六〇年を迎えると、高齢者の割合は減少に転じていた。四〇パーセントを超えるといわれていた予測の三分の一以下にとどまってる。一〇年後における高齢者の割合は、一桁になるのではないかと推測されるようになった。

 二〇五〇年に年金の支給開始年齢が八〇歳に引き上げられた。退職金が支給されない会社が増加に転じたことで、後期高齢者であっても働かざるを得ない状況が作られた。

 年金額も最低保証が三万円となり、家賃すら払えない金額まで落ち込んだ。最高で十二万円にとどまり、生活を送るには不十分だった。

 若い身体なら問題なくとも、年配者に社会労働はきつかった。高齢者労働による死者は年に五万人を突破。警備員、軽作業などといった酷暑に晒される職種では、熱中症による死亡が目立った。二〇六〇年の日本では、真夏になると四三度前後の気温が上昇していた。

 高齢化社会に歯止めをかけたのは、自ら命を絶つ高齢者が増えたこと。とても生きていられないと、死を選択する高齢者が急増した。年に二〇〇万に匹敵する老人が命を絶った。

 高齢化対策を怠ったために、あってはならない不幸が起きた。四〇年前の高齢者が痛みをわかちあっていれば、こんなことにはならなかった。未来にツケを残したことで、当時の若年層にしわ寄せがいってしまった。

 二〇八〇年、高齢者の割合が数パーセントまで減少。政府は年配の知恵を若者に伝授できるよう、手厚い支援に乗り出すようになった。現役世代で支えられるようになったことで方針転換した。年金の支給年齢も五五歳まで引き下げられ、現役であっても支給を受けられる。

 高齢者が増加すればぞんざいに扱い、減少すれば手厚くもてなす。時代の流れなるものはつくづくおぞましい。

 

※フィックション(想像の世界)です。現実とは異なる可能性もあります。

 

文章:陰と陽

関連記事

  1. 頭が回らない時
  2. 短編小説:『ふしぎなおとしもの』
  3. みじめになりたい人がいるのか?
  4. 二度と悲惨な事件を起こさないために
  5. 広井良則『持続可能な医療─超高齢化時代の科学・公共性・死生観』(…
  6. 生産性を上げるには
  7. ジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』角川文庫
  8. 映画『台北ストーリー』のご紹介

おすすめ記事

『僕と君』

君といた時間の方が長く感じた。でも君はもういない…

障碍者が一般会社で働く難しさ7

『障碍者が一般で働く難しさ7』31.健常者のやろうとしたことで、…

居心地を良くしたい利用者同士の会話

利用者A「利用者の立場に立つことはできなくとも、障碍について肯定的な人がいいな」…

映画『メイド・イン・ヘブン』をご紹介

出典:『メイド・イン・ヘブン』より映画『メイド・イン・ヘブン』をご紹介&nb…

悪口ばかりをいう人

 他人の悪いところを重箱のようにつつく人間がいる。こういうタイプとは付き合わないよう…

新着記事

PAGE TOP