コラム

ショートショート『高齢者施設に変化』

 

  二〇五〇年、高齢者施設では異変が起きていた。入居者が集まらず、倒産に追い込まれる社会福祉法人が増加した。

 超高齢社会ゆえに、高齢者の数は充分すぎるほどにいた。ただ、入居に必要な金銭を収められる高齢者が減少していた。非正規社員として働いていた人間は、月々の入居費用を支払うことができなかった。

 高齢者の入居条件が厳しくなったことで、敬遠されたという事情もある。問題のある入居者を強制退去させる権利(条件付き)を施設側に与えたため、かなりの数の高齢者が追い出されるようになった。認知症、痴呆症、聴覚障害、視覚障害などの障碍を抱えている、利用者は高確率で施設から締め出された。

 民間で参入した会社の一部が懐をにぎわすために、問題行動を防止するための制度を悪用した。大金を入手しようと、入居者を些細な理由で退所させた。そのことが社会問題となり、高齢者は施設に頼らずに生きるようになった。なお、経営者は詐欺罪で警察に逮捕された。

 一度失った信用を取り戻すのは難しい。社会のサポートとして機能した、高齢者施設は新たな時代を迎えようとしていた。

 

*フィクションです。現実とは関係ありません。

 

文章:陰と陽

関連記事

  1. 障碍者はいじめに遭いやすい
  2. 『ザッヘル=マゾッホ紹介』(河出文庫)ジル・ドゥルーズ著、堀千晶…
  3. 支援者ができるのは一つだけ【障碍編】
  4. オースター『最後の物たちの国で』のご紹介
  5. 介護業界を目指す方が最初に取得する資格
  6. 未来の障碍者支援(予想)
  7. 世界の国と国旗☆第94回目 セントルシア
  8. オカルトジャンルも面白い?
PAGE TOP