愉快な営業マン
私が二十代後半の頃、一人の営業マンが入社して来ました。
年は私より一歳上だったと思います。
社長がクラブの店長をしていた人をスカウトしたようでした。
社長の話では、面白いことが言える”営業”に向いた人だと言う事でした。
私の印象では、クラブの店長をしていただけあり、頭の回転が早く、言うことも面白く、きっと”吉本の芸人さん”にもなれる人だと思いました。
決められた仕事
面白い営業マンが入社して一ヶ月くらいたった頃、突然「コンピュータが売れたから頑張ってね!」と言って来ました。
事前の相談はありませんでした。
普通は、「顧客を管理したいプログラムは出来るか」とか「生産を管理するプログラムは出来るか」とか、事前の相談があるものです。
プログラムを作る私の方では、顧客が要求しているプログラムが出来るか出来ないか、相談して欲しいと思っていました。
ただ、面白い人で憎めないところがあり、「頑張るしかないか...」とも思いました。
未経験のバーコードプリンター
仕事の内容は、婦人服を製造販売する会社の売上と仕入を管理する仕事でした。
売上や仕入を管理するプログラムは過去に何本も作成しているので、問題はなかったのですが、
商品に付けるバーコードを発行しなければなりませんでした。
今では、パソコンのプリンターでバーコードが簡単に作成できますが、当時は、バーコード専用のバーコードプリンターが必要でした。
営業マンは「パソコンでバーコードプリンターが動くからオフコンでも動くでしょ」と言ってきました。
(オフコンとは中小企業向きにパソコンより信頼性を高めたコンピュータです)
しかし、パソコンとオフコンでは、データの形式も違い、パソコンで出来るからと言って、オフコンでも出来るとの確信を私は持てませんでした。
期限は一週間
バーコードプリンターに付属していた説明書にはパソコンとの通信方法が書いてありました。
パソコンとバーコードプリンターが通信をしてバーコードを発行しているのです。
オフコンで通信のプログラムを作れば理論的には出来そうですが、私には通信のプログラムを作った経験がありませんでした。
オフコンのメーカーに問い合わせても「事例がないので分からない」との返事でした。
ただ「通信内容が確認出来る機械を一週間貸し出すことは可能」とのことでした。
私は、機械を借りて、何とか一週間頑張ってみることにしました。
期限内に完成
社内にバーコードプリンター接続の経験者はいなく、オフコンのメーカーにも事例がない。
仕方なくバーコードプリンターの説明書を読み、オフコンの分厚い説明書を読み、パソコン用にデータを変換する方法を調べ、通信のプログラムを何度も作り変え、
通信内容を何度も何度も確認し、毎日残業しながら一週間の期限内に何とか完成させました。
難しいと思う仕事でもやってみること
誰も教えてくれる人がいない、ただ説明書があるだけ。
今まで経験した仕事で一番不安な仕事でした。
でも、やってみて出来たと言うことは、以後の仕事をする上での自信になりました。
理論的に出来ない仕事もあると思います。
(例えば一ヶ月で三百本のプログラムを作れと言われても時間的に不可能)
しかし、理論的に出来るようであれば、やってみる価値はあると思います。
出来れば次の仕事への自信になります!
出来なければ?
わすれましょう...
文章:エムユー
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