室内には綿菓子さながらの、仄(ほの)かな甘さを伴った空気が流れていた。
麻由美を除く家族は全員外出中。家の中にいるのは、彼女だけとなっている。
静かに空を眺めると、雲が東から西へとゆっくり移動している。本日は地上に雨を降らすつもりはないのか、途切れ途切れで色は白かった。
麻由美は大きな欠伸をする。ぽかぽか陽気が、眠りの世界へと導こうとしていた。あらがおうとしても、眠気が体内をぐるぐると循環するのを止められない。
布団が入っている、押し入れの襖を開けた。仮眠用、睡眠用の二つが用意されており、今回は前者を使用することにした。
仮眠用の枕を用いることで、昼寝の時間を抑制することができる。睡眠用の枕を使用すると、心が和らぐのか、長時間の睡眠になってしまいがち。睡眠時間を分けるために、二つの枕を所持している。
麻由美は仮眠用の枕を後頭部に当てると、ゆっくりと瞼を閉じた。柔らかい眠りの世界が彼女を包み込んでいった。彼女は程なくして、眠りの世界へと入っていった。
窓を閉め忘れていたため、隙間から風が流れ込んできた。室内は心地よい空気が入り込んで、彼女の睡眠を祝福していた。
文章:陰と陽