中学生の時。
毎年春の最初の体育の授業で、校舎の周りを10周して、そのタイムを計る。
勢いよく走り出したものの、周りを見ると、自分の少し手前を行くものが一人いるだけで、みんな真面目に走っていない。
グループになって、談笑しながらゆるゆる走っている者もいる。
自分もそれに合わせてスピードを落として走った。
それでも2位につけていた。
角を曲がったところで、向こうの角を勢いよく曲がっていく者が見えた。
「2位だと思ったけど、さらに先頭がいたのか?」
1周目も終えていないのに、周回遅れがいるわけがないし。
次の角を曲がると、やはり向こうの角を勢いよく曲がる者がいた。
そんなことが何度かあって、ゴールした。
「俺、3位か」
というと先にゴールしていた奴が言った。
「いや、2位だよ」
「もう一人、前を走るやついたろ?」
体操教師の記録帳を覗いても、そこには1位であるべき生徒の記録はなかった。
文章:百百太郎
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