電話が鳴ったので出ると、
「ごめんなさい」
と聞き覚えのない先方の声に、わたしは間違い電話だと思い、そのまま黙って電話を切った。
後日、買い物に出かけた先で、背後から突然、
「ごめんなさい」
と声をかけられた。
わたしは道を譲ろうと脇に寄るも、そこには誰もいなかった。
- 気のせいか? -
さらに後日、今度はトイレに入っていると、コンコンとドアノックされた。
コンコンとドアノックで返すと、ドアの向こうから
「ごめんなさい」
またしてもあの声。
しかしここは、一人暮らしのわたしの自宅トイレ。
今ここに自分以外、人がいるはずがない。
とっさに、
「どういたしまして」
と返事をすると、それ以来そんな現象は起きなくなった。
文章:百百太郎
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