3階の自宅マンションにいると、外でガシャーン!と凄い音がした。
「何事!」
と、ベランダへ飛び出して階下を見ると、人が仰向けで倒れていた。
状況から、スクーターで転んだようだ。
ドライバーは仰向けになったまま、わたしの顔を見ると、照れ臭そうに笑った。
「なんだ、大した事なさそうだな」
わたしは部屋に戻った。
しばらくすると、救急車やパトカーがサイレンを鳴らしながら駆けつけてきた。
その騒々しさから、まるで大事故だ。
翌朝、仕事へ出かけようと降りていくと、道路の傍らに花束が添えられていた。
ちょうどゴミ出しをしていた同じマンションのおばさんに、驚いて訊いた。
「昨日のスクーターの人、死んじゃったんですか!?」
「そりゃあ、頭がもげたんだから、即死でしょうよ。頭は向こうの公園まで飛んで行ってたらしいよ」
とおばさんは言った。
昨日、わたしに笑いかけてきた頭は、誰のだったのだろう?
文章:百百太郎
画像提供元 https://visualhunt.com/f5/photo/2248673508/4632914e87/