「おばあちゃん、おばあちゃん、おばあちゃん~!?」
何度、声をかけても、祖母は聞こえていないようです。
少年は祖母の部屋の扉を開けると、室内には白骨化した人間の姿がありました。死体のことに詳しくない年代であっても、昨日、一昨日に死んだとはとても思えませんでした。少なくとも、死後数年は経過しているといえるでしょう。
夢ではないかと思い、少年は自らのほっぺたをつねることにしました。痛みを感じることから、幻想を見ているわけではなさそうです。目の前にあるのは、れっきとした白骨化した死体です。
少年は死体の顔を覗き見ると、おばあちゃんにそっくりでした。昨日まで生きていたはずなのに、白骨化するのはさすがに不可解です。
おばあちゃんが死んだのではないかと混乱していると、玄関のチャイムを鳴らされました。
「ただいま。今日はすき焼きだよ」
声はおばあちゃんそのものでした。少年はそのことに安心すると同時に、白骨化した女性についての疑念を持つようになりました。
レジ袋にどっさりと買い込んでいる女性に、白骨化した遺体について訪ねました。
「おばあちゃん、どうして白骨死体を置いたままなの」
「私の双子の妹なの。生前に孫のことを頼むと言い残したのよ」
少年は一緒に暮らしていた女性が、本物の祖母でないことを初めて知ることとなります。どうしてこれまで気づかなかったのでしょうか。赤ちゃんだったため、はっきりとした顔を記憶していなかったのかもしれません。
義理の祖母は冷静な声で、少年に訪ねてきました。目からは不思議な力を感じました。
「おばあちゃんと一緒に生活したいのかい」
少年は慌てて首を振ります。肯定の意思表示をした瞬間、義理の祖母に何をされるのかわかりません。
「秘密を知られたからには、生かしておくわけにはいかないね。私のためにも、あの世に逝ってもらいましょう」
襲われるのではないかと思った矢先の出来事でした。白骨化した遺体の手が伸びて、義理の祖母を闇の世界へといざなっていきました。少年は一人きりの部屋で、おばあちゃんに助けられたことに感謝します。
「おばあちゃん、守ってくれてありがとう」
後でわかったことは、義理の祖母は存在しないということでした。少年は誰と生活してきたのでしょうか。
文章:陰と陽