詩・ポエム

詩・『更地』

街中で更地を見ると 自分の酷薄さを思い知る

ついこの間まで そこに何があったか?

それが まるっきり 思い出せない

更地になる 前

そこには確かに

喜びがあって

怒りがあって

哀しみがあって

楽しさがあって

つまりは ドラマがあった

街も 生きている

だから 新陳代謝する

その事実があって なお

いとも いともあっさりと

「誰かのドラマ」を忘れてしまえる 自分が

ひどく 厭(いや)になる

そして

四十九日も 七十五日もしないうちに

更地の上には 新しい建物ができる

そこでもまた ドラマが息づく

厭だなあ なんて言いつつ

僕は やっぱり忘れるだろう

酷薄さと 郷愁と 憧憬に 揺れて

どこへも 遣る瀬がなさ過ぎて

「へっくしゅん!」

僕は どうしようもない くしゃみをした

 

作:フジカワ

関連記事

  1. 『いつもと違う朝』―思い出を胸に旅立つ日―
  2. 『自分だけは…』―自分自身だけは信じてあげて―
  3. 詩:『ほんとうのことは』
  4. 『大切にしたいもの』
  5. 『障害者であっても…』―障害を理由に逃げたくない―
  6. 『一度裏切られると…』
  7. 『弱さ…』
  8. 『どん底』―這い上がるのは、簡単な事じゃないー
PAGE TOP