コラム

フィクションを現実視するな

出典:© いらすとや. All Rights Reserved.

血塗られた物語、それが昔話

時々考えることがある。『かちかち山』の狸の死因は本当に溺死だったのかと。

火傷が化膿し、敗血症による病死か。それとも兎に何度も殴られての撲殺か。

そんなことを黙々と考えてしまう。そしてなんだか面白いので色々調べてしまう。

知っていたことだが昔話は残酷だ。読んでいるとバックに血が見える物語ばかりだ。

最近はその残酷な部分は切り取られたり、物語そのものを隠蔽されたり、平和的な物語に編集されているが大事なことを忘れている。怖くて残酷だから面白いということを。

先に述べた『かちかち山』の狸のしたことは、

1、田畑を荒らし、嫌な唄を唄う。
2、お婆さんを杵で撲殺。お婆さんの皮を剥ぎ、それを被って化ける。
3、お爺さんにお婆さんの肉で作った婆汁を振る舞い、また嫌な唄を唄って逃走。

これが狸のしたことだ。確かに残酷だ。一方兎のしたことは、

1、狸に良い儲け話があると騙し、一緒に柴刈りに行く。
2、狸の背負っている柴に嘘を付きながら火を点ける。
3、後日文句を言いにきた狸に薬と称して辛子味噌を塗る。
4、魚釣りで狸を土で作った船に乗せ、櫂で殴りながら沈める。

よく見ると五分五分だ。良い感じにバランスが取れている。1なんてなくてもいいから秤は限りなく水平だ。

因みにお爺さんにも非がある。狸を狸汁にして喰おうとしたことだ。

狸の目線で見ればそりゃあ、逃げる為にお婆さんを撲殺するのにも頷ける。だが、お爺ん目線になると、田畑荒らされてたら生きていけない。

なので、これは生きるとはどういうことなのかを考えさせられる物語でもあるのかもしれない。

生きる為には何かを奪わなければならない、それが自然界の掟。それを教えてくれているのだろう。

(どれも所説あるが、最後は兎とお爺さんの二人で狸汁を食べてめでたしめでたし。)

他にもある。『瓜子姫と天邪鬼』だ。

瓜から生まれた瓜子姫は機織りが得意な美しい娘だった。そんな彼女にお偉いさんが求婚。

それが面白くない天邪鬼は彼女を殺し、その皮を被って彼女に化ける。

だが、瓜子姫の想いが鳥となり鳴き声で正体をばらされ、今度は自分が殺されるというこれまた残酷な物語。てか、皮被るの好きだな。

この物語は各地というより、東西での違いがすごい。

西は殺されず木に吊られているところを助けられ、天邪鬼が死ぬ。東は両方とも死ぬという、東西でかなりはっきりと違っている。

昔話は色んな意味で強烈

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根本的に昔話はわけがわからん。

めんどくさがりの老夫婦が、自分たちの垢を集め人の形にすると生まれた『垢太郎』(『力太郎』との違いが分からない)や釈迦に言われて鉢をかつぐ(被った)ことになった女性『鉢かつぎ姫』(そんなデカい鉢よく見つけたな)、名前は有名だが、内容の知名度はとても低い『金太郎』。

わけが分からないせいか興味をとてもそそられる。なので『お御伽草子』を探し出して読んでみることにした。

きっとその中にはもっとわけがわからなくて、残酷な物語があるのだろう。楽しみだ。

その昔話、異議あり!

納得できない物語が一つある。『かさじぞう』だ。

大晦日の迫った夜、お爺さんが傘を売りに出かけるが、傘はまったく売れずお爺さんは帰ることにする。

その途中、雪が降り積もった地蔵を見つける。哀れに思ったお爺さんは売れなかった傘と自分の被っていた頭巾を被せて帰る。

すると、とても重い物が何体も近づいてくるような音が聞こえてくる。お爺さんとお婆さんはとても怯えていたが、音が聞こえなくなったので外を覗くと、沢山の食料が置いてある。

おかげで二人はとても楽しいお正月を迎えることができた、というのが大まかなストーリーだ。この何が気にくわないのか…。

お爺さん、傘を編んでるということはすごい貧乏ってことだよね。そして売れ残りとはいえ、それをあげちゃうような良い人なんだよね。

ならば何故最初から助けてくれなかったのかと。傘くれたから助けたの?じゃあ、何かくれるまで何もしてくれなかったの?

そうなるとそれはビジネスだ。金が傘に代わっただけだから。

この物語にはどうも納得出来ない。

 

文章:ぴえろ

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