サスペンス・ホラー

怖い話:『赤い法被の売り子』

出典:Photo credit: bradleygee on Visualhunt.com

野球場の通路に、赤い法被を着た若い男の売り子が、座り込んでグデーとなっていた。

人が通りかかると「・・・ああ・・・、あ、あ、あ・・・」と白目をむき、震える手で、かっぱえびせんの袋を差し出す。

その様子はまるで、『死にかけてます。声も出ません。だから買って!』と言いたげ。

みんなが無視して通り過ぎる。

変な売り子がいるなぁ。面白いなぁと思いながら、わたしは遠目から眺めていた。

そこへ大きな歓声が聞こえてきた。

わたしは試合の様子を見に、一旦そこを離れた。

しばらくして戻ると、あの売り子はいなかった。

やがて試合が終わり、帰路につく。

バイト売り子たちも売り上げ精算に店の前に並んでいた。

その時、売り子たちはみんな、黄色い法被を身にまとっていることに気付いた。

赤い法被の売り子はどこにもいなかったのだ。

もしかしてあれは、死にかけではなく、とっくに死んでいたのでは?

 

文章:百百太郎

関連記事

  1. 怖い話『終着駅』
  2. 怖い話:『廃墟団地からの声』
  3. 怖い話『看板人形』
  4. 怖い話『押し入れにいたもの』
  5. 怖い話『砂山』
  6. 怖い話『水の中へおいで』
  7. 怖い話『持っていくな』
  8. 怖い話『怖いおっちゃんおる!』

おすすめ記事

障碍によるハンディを理解する

  障碍当事者にとって辛いことの一つとして、努力しても相手に伝わらないことが挙げられ…

『どうすればよかったの?』―誰か教えてこの答えを―

もう分かんないよ…人の気持ちを理解するのって……

張り子の寅(とら)で知られている『信貴山朝護孫子寺』の紹介

 張り子の寅(とら)で知られている『信貴山朝護孫子寺』の紹介 信…

【尼崎の歴史発掘】織田信長に焼き討ちされた尼崎最古の古刹『大覚寺』紹介

Copyright ©あまがさきアート・ストロール実行委員会【尼崎の歴史発掘…

【第三回】『市場に評価される方法を学ぶ』

ちきりん『マーケット感覚を身につけよう』ダイヤモンド社 の紹介本…

新着記事

PAGE TOP