『家宝』(2002)は、ポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラ監督の作品です。
オリヴェイラ監督は2015年に逝去するまで100歳を超えて活動され、現役最高齢映画監督として知られていました。
あらすじ
うつくしい丘陵地帯を臨む聖母マリア荘が舞台となります。
メイドの息子ジョゼは怪しい女性ヴァネッサと悪い商売を始めます。賭博にはまり破滅した父を持つカミーラは、ジョゼに愛されながらも、屋敷を相続した富豪のアントニオとの結婚を決めてしまいます。
不思議な魅力を放ち始めるカミーラは、夫の元愛人のヴァネッサと対峙し、事態は思わぬ方向へと展開していきます。
みどころ
物語の展開や登場人物たちの魅力はさることながら、一つ一つのショットが美しいことが最大の特長です。
また、タイトルに意味深長な監督の狙いが込められています。
原題はポルトガル語で「不確定性原理」といい、なんと物理学用語となっています。
あまりにも小さな物質の観測においては、「その位置を確定しようとすると運動量が分からず、運動量を確定させようとすると今度は位置が分からない」というもので、粒子の運動を正確に観測することは困難であるという原理のことを言います。
月並みではありますが、周囲から「天使のようだ」と評される主人公カミーラが本当のところはどうなのか不確定であるということを言おうとしているのだろうか?などと筆者は考えました。
本作はオリヴェイラ監督お得意のどんでん返しがあり、あっと驚かされる結末にうなされること間違いなしです。
文章:増何臍阿