コラム

『ある行旅死亡人の物語』のご紹介

ある行旅死亡人の物語©毎日新聞出版

 

本書は、取材した共同通信記者である武田惇志氏と伊藤亜衣氏の共著です。
毎日新聞出版から出ています。

身元の分からない死者は「行旅死亡人」と呼ばれます。
兵庫県尼崎市のアパートで2020年4月に孤独死した高齢女性は、部屋の金庫に現金3400万円を遺していました。
女性の右手指はすべて欠損していましたが、警察は死因に事件性なしとして処理しました。

ネット記事としても掲載されて、大きな反響を呼びました。
https://bunshun.jp/articles/-/59265
「身につまされる」といった感想など、多くの人々が関心を寄せていました。

謎の多い身元不明の、無名の人物の人生を、二人の記者が丁寧に追いかけていきます。
死後に興味を持たれて、色々な事を調べられて有名になってしまう。
そのようになった原因は多々あるでしょうが、有名無名を問わず、誰の人生にも重みはあります。
それがちょっとしたきっかけで左右するものなのだということがわかります。

本書はミステリーものというわけではありません。
さまざまな事実が判明していく面白さはありますが、結局のところ肝心の謎は解けないままです。

個別的には大抵の人は、「よくある話」の堆積で人生が埋め尽くされている。
そう考えるのはそれは間違いではありません。しかし、そのひとの人生の側に立てばやはりしっかりとした内実があるのだ。

そのことを『ある行旅死亡人の物語』は証しているのではないでしょうか。

 

文章:増何臍阿

関連記事

  1. あと一勝すれば十両に残れる場合は幕下に落ちることは少なくなった
  2. 中小企業のウェブサイトが闇深い
  3. 大谷翔平選手の30号ホームランを見た感想
  4. コラム:『質の低い国・ニッポン』
  5. ショートショート『働きたくない男の考え方』
  6. エッセイ:『さもしい世の中』
  7. 【子育て】反抗期は「クソババァ!」と言われたら大成功だそうです。…
  8. 『とある献血ルームの、なんということもない日常 (1)』
PAGE TOP