コラム

エッセイ:『少数派の我慢』

 

私の職場は港湾の埋立地にあった。

近くには物流施設、化学工場、郵便局などがあり、どれもが大規模なものだ。

 

パンデミックとなり、換気のため窓を開けることになった。

 

ところが、化学工場からの悪影響を杞憂し換気に反対する人物が現れ抗議の動きを始めたので、それを封じるために署名を集めるという、なんとも珍妙な騒動がおきた。

 

健康に害のある化学物質が垂れ流されているのではないかと不安がる人も、署名を集めてどうこうしようという人も、すこしおかしいのではないか、と思った。

 

人が何を気にするかといったことは千差万別で、なんとか社会をうまく回すために一定のルールを定めて、ある程度は少数派には我慢してもらうといったことはよくある。

 

不安になったひとも、化学物質過敏症で、窓を開けてちょっとでも風が吹いたらしんどくなるのかも知れない。でも、大方のひとはそんなことはなく、化学工場も定められた基準を守って健康被害が起きるほどの濃度の物質が外に漏れ出ないようにはしているはずである。

 

ルールを設けるとか、何かを決定して状況を変えるとなると、それで不利益をこうむったり反対の意思を示す人は必ずといっていいほど現れる。

 

そうしたひとを納得させるために、何らかの補償をしたりするなどして利害調整を行うことが多いと思う。

 

しかし、これとは逆に、大方が反対しているのに少数のひとたちが利益やメンツのために押し切ってしまおうとすることがある。力のある人たちがみんなの意見を聞くことなく、ただやりたい放題やろうとする傾向のことだ。

 

我慢を強いられる少数派というのは力の弱い声無き人々であり、そうした人々の声をしっかりとすくうと謳って選ばれた代表者が、実際にはただやりたいようにやりたいからそんな嘘をついていただけだった、ということが明るみになっている。

 

民主的であるとはほんとうはどういうことなのか、民主主義とは、といったことを皆が本気で再考すべき時なのではないだろうか。

 

文章:増何臍阿

 

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