コラム

エッセイ:『Dad’s complaints(おじさんのボヤキ)』

 

イライラすることが多い

おおむね人間関係によるところが多いのだが

がんばってもしっくりこなくて

イライラする

だから金銭感覚や性格的に折り合わない人とは距離を置いた

 

神様のいたずらだろうか

ひとり距離を置いたら

その間を埋めるように

別の誰かと関わることになった

 

その人は才媛(さいえん)だった

好奇心旺盛でとにかく活動的で

曲がったことが嫌いで

向上心が漲っていて

旅行が好きだという

 

生活に倦み疲れていたので

その才媛と話しても、特に感化されずに

私生活にしろ、仕事にしろ

何かを目標に掲げ

成し遂げようとする気は相変わらず起きなかった

 

芋臭いドロドロした感情にさいなまれて

それどころではないのだ

彼女が楽しげに話す日常や価値観に

相槌を打ちながらも

心を閉ざし、適度に賛辞を並べ

 

さりげなく活動を共にすることを誘われても

婉曲に話題をそらして

彼女のペースに合わせることから逃げていた

もう人や日常に疲れているのだ

一人にしてほしい、でも孤立は寝食の機会を失う

 

どこか近場でも出かけるのすら億劫だった

持病と服薬の影響かもしれないが

日々の暮らしに追われている気がしてならない

ゆとりを失いイライラがやまない

けれど、それで仕事に手がつかなくなることだけは避けたい

 

彼女は若くて、そのことを心得ていた。そして内面も秀でていた

そして照れくさそうに見た目も整えたいと意欲を見せていた

彼女のイニシアティブのままに行動を共にすれば

見たこともない世間や広い異文化や価値観へ連れていってくれる気がするほど

彼女はバイタリティに溢れていた

 

それは本当にそうかもしれないし、ただの錯覚かもしれない

ただ彼女の屈託のない笑顔はみじんの悩みも迷いも感じられないほど垢ぬけていて

悩みや迷いやコンプレックスを抱え、年老いた目には

ただ眩しくて直視できない輝きとしてしか映らなかった

そして、ドロドロした芋臭い現実と、その垢ぬけた輝きが、せめぎ合う

 

「こっちへ来ればいいのに」

彼女はそう言いたげだった。

その言葉を振り切るように才媛とは話を終えた

「少なくとも、そこから去った方がよいと思う」

彼女はアドバイスもしてくれた

 

才媛な彼女をがっかりさせてしまった

そこから生臭い金銭の話になることを恐れた

才媛の容姿や若さを値踏みする下世話な俗物根性が頭をもたげる

それを抑え、消し去るために強い薬を服薬する

こうして一日が終わる

 

根本的な心のしこりの解決がいつも明日へ先送りされ

解決されることなく、日ごとに、軋む音を立てて老いて行く

失った言葉が割れた鏡のように飛散し散らばっている

それらをひとつずつ拾い集め感情の赴くままに並べていく

節くれ立った指に切り傷を負う痛みすら鈍感なままに

 

それほど彼女の存在は大きかった

ねじ曲がった心が呻くように言葉を探す

即物的な行動が染みついているので

パソコンで動画サイトを開くと

Joe Cocker の“ You Are So Beautiful”が流れ出した

 

Joe Cocker – You Are So Beautiful

   ↓

https://youtu.be/WvAr9umnZ54

 

 

文章:drachan

 

画像提供元 https://www.pexels.com/ja-jp/photo/372042/

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