昨夜も嫌な夢を見た。
ひとつ目の大男が何か棒のようなものを持って追いかけてくる夢だ。
神戸の地下街らしき場所を歩いていたら、ソフトクリームをなめる大男と目が合ってしまったのが運の尽きである。
大男は残りのソフトクリームをペロッとたいらげると、近くに落ちていた棒のようなものを手にしてこちらを睨みつけてくる。
ひとつしかない目が急速に赤みを帯びはじめたかと思うと、次の瞬間、こちらに向かって
ダッシュしてきた。
あわてふためいて、一心不乱に逃げて逃げて逃げる。
いつのまにか地上に出ていて、あたりは波止場になっていた。
逃げ場が無くなった。後ろからは大男が追いかけてくる。
唸り声をあげて大男が覆いかぶさってきたところで、目が覚めた。
汗でぐっしょりだ。
とんでもない悪夢だった。
それから数カ月たった。あの悪夢も完全に忘れ去っていた。
野暮用を終えて夜の神戸の街をふらついていた。
雨が降ってきたので、地下街に逃げ込んだ。
いやに人影のまばらな区域を歩く。コツコツという自分の靴音が高く響く。
靴音が反響して自分以外の靴音がするような気がしてくる。
なにかがおかしい。
反響音ではない、他人の靴音がした。しかし誰もいない。
と、後方から人影がながくのびてきた。
わたしは後ろを振り向いた。
ひとつ目の大男が笑っていた。
文章:増何臍阿
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