コラム

エッセイ:『連休の夢』

 

――長い連休があったのだが、ほとんど自室で寝て過ごした。

 

とても長い時間を睡眠に充てていたと思う。

食事時になれば起こされて目を覚まし、食事を摂ってから再び寝床でゴロゴロして眠りについた。眠っている間、いくつかの夢を見た。思い出せない夢もあるが、目覚めた後も鮮烈に記憶に残っている夢があったので、その事について書いてみた。

これは、意味も脈絡もない、ただ記憶に焼き付いた夢の記録である。

 

その1

スラム街をさまようホームレスになっていた

仲間のホームレスが死んだ

遺体は腐敗して悪臭を伴い体液がしみだして周りに広がっていた

その仲間の遺体を抱え上げて焼却用の台に横たえた

腐った汁が体中についた

すぐさま炉の中へ台車を押し込み荼毘に付した

 

骨壺は手のひらに乗るくらいの小さな白い陶器の入れ物を渡された

焼かれた遺体が炉から出てくるとまだ人の骨格の形をしていた

これでは骨壺に入りきらないと、骨が灰になるまで焼いてくれと頼んだ

再び炉の中へ台車は消えていった

 

しばらくして、台車が出てくると

太い骨以外はほぼ灰になっていた

砂をかき集めるように素手で遺灰を集めて山を作り

両手で掬い上げて骨壺に入れた

すぐに骨壺は一杯になった

蓋をして残りの骨や灰を後にした

 

スラム街の狭くて曲がりくねった路地を進むと

台車のような机が道端に並べてあり

一目で炊き出しの場所だとわかった

端の台にはパンが無造作にいくつか置かれていた

包装もされていない食パン1斤が二つ

手前にシフォンケーキのように大きくて柔らかそうなクリームパンがあった

そのクリームパンを断りなしにつかんで半分に割った

そして口に入れて胃に流し込むように食べた

そこで意識は覚醒して、夢だと悟った

 

その2

四角い煙道のようなピットの中へロープにぶら下がって下へ降りていた

四方の壁はモルタル壁のような石垣だった

井戸の底へ降りていく感覚だった

ライトに浮かび上がった壁には

誰かがつけた赤茶けた手のひらの跡がたくさん見えた

砂埃の舞う底に降り立つと横方向へ奥に広がる小部屋があった

 

進むと人の腕ほどもある大蛇がいた

鎌首を持ち上げ首の周りに扇のようなものを広げていた

コブラだ

ゆっくりと持っていた銃を抜き出し銃口を鎌首に近づけて引き金を引いた

あたまを吹き飛ばされたコブラは狂ったように動き回り

何度も弧を描いてのたうち回っていた

 

コブラの胴体を掴み

頭がなくなった傷口からぶら下がっている白い糸のような腸を掴んで勢いよく引っ張った

腸が体内から引きずり出されていく

コブラの内臓は強壮剤の材料として重宝される

まだ温かい腸を巻き取るようにかき集めてポケットにしまった

 

小部屋を奥へ進むと急に小窓が見えそこから強い光が差し込んでいた

地下へ降りたはずなのに外への出口があるので少し混乱した

そしてようやくここはピラミッドの内部で

そこへ探索しに来ているのだと思い出した

ホームレス仲間の遺灰をこの建造物のどこかに納めるために

安息を求め冥府をさまよっていたのだ

 

その3

一人乗りのカヤックに乗っていた

川は狭い運河でどちらかというと排水溝のようだった

水位だけは高く黒く濁った水が淀んでいた

カヤックのオールをこぐとすぐに川面に浮いているゴミにぶつかった

ボールやプラスティックのトレイや袋がそこら中に浮いてひしめき合っていた

その間を恐る恐るオールをこいでカヤックの先端を左右に振り

間隙を探して前へ進む

汚物やゴミの中を泳いでいるようだった

 

その4

サッカーの試合に参加していた

中学生の試合だったと思う

サイドライン付近から味方がセンタリングを上げた

ペナルティエリア内のほぼゴール前にいたが絶妙のタイミングでボールが飛んでくる

トラップしてゴールへ蹴りこむだけだ

だがトラップもせずヘディングで前の味方の足元にボールを折り返した

この方が確実に味方はゴールネットを揺らしてくれる

 

何度もセンタリングが上がってくる光景が繰り返された

トラップして自分の足で決めるか

味方の足元に落として味方が決めてくれるのを頼むか

状況は瞬時に変わる

 

またセンタリングが上がってきた

迷っていられない一瞬の判断を

繰り返し迫られる

 

ボールはゴールネットに突き刺さっただろうか

ゴールラインにこぼれて仕切り直しになったのだろうか

敵に奪われて反撃をくらったのだろうか

 

わからないまま夢から覚めた

布団の中で体が燃えるように熱い

 

 

――連休が終わり、日常生活に戻る。

夢の出来事は忘れてしまうのが常だが、これらの夢だけはなぜか覚えていた。けれど時間がたてばこの夢も忘れてしまうだろう。なんだかそれが惜しい気がしたので言葉で書き表してみた。

振り返るに、悪夢ばかり見ていたから鮮明に覚えていたのかもしれない。それに、夢に殺されることはまずないし、目覚めたときは少し清々しい気分にさえなれたように思う。

 ただし、この夢について考えるのは止そうと思っている。理由は自分でははっきりしないが、そういうことに現実の時間を費やすと鬱蒼とした気分になるかもしれないからだ。

だから、これらの作文を書き捨てるので、読み捨ててくれれば幸いである。

 

 

文章:drachan

 

 

画像提供元 https://www.pexels.com/ja-jp/photo/4874503/

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