玄関チャイムが鳴った。
ハーイと返事をすると、ドアの向こうから、
「お迎えにあがりました」
という声。
「え、何ですか?」
「こちら倉本さんのお宅ですよね」
という。
倉本さんは同じ団地の別棟の住人だ。
呼ばれたタクシーとかが、お宅を間違えてるなと思い、
「倉本さんなら2号棟ですよ」
と教えてあげたが、
「とりあえずドア開けてもらえませんか?」
– え、何で?! -
「イヤです」
そんなやり取りをしばらくあったあと、相手は帰っていった。
翌日、2号棟の倉本さんのおじいさんが亡くなられたという、知らせを受けた。
急性の病気で突然倒れたということだったが、お迎えってあっちのお迎えってことでは?と思うとゾクッとした。
あの時、ドア開けてたらどうなってたんだろ?
このことがあるまでは時々、換気のためドアや窓を開け放していることがある。
それ以来、ドアはいつも閉じておくようにしている。
文章:百百太郎
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